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なぜXGは世界を熱狂させる?『THE CORE – 核』で示す「正しさ」の先にあるポップの未来

2026.1.23

#MUSIC

ポップスターという存在が、高度なリテラシーと身体能力を求められる「総合競技のプレイヤー」へと変質した2020年代。その過酷なサバイバルの最前線で、圧倒的な完成度を武器に突き進んできたのがXGである。

しかし、待望の1stアルバム『THE CORE – 核』が提示したのは、単なるストイックな自己研鑽の成果ではなかった。本作で彼女たちが到達したのは、徹底した訓練の先にしか現れない、予測不能な「わくわく」という名の解放だ。ヒップホップ / R&Bという強固な「核(コア)」を抱えながら、宇宙的な視点で既存の定義を軽やかに飛び越えていく本作の本質を紐解く。

ポップスターにさまざまなリテラシーが求められる時代

近年、ダンス&ボーカルグループのプレイヤーに求められる能力は、明らかに変質している。ポップの総合競技化によって、歌唱力やダンススキルはもはや前提条件となり、ジャンル史への感度、黒人音楽やクィアカルチャーの歴史と実践へのリテラシー、政治や人種をめぐる理解、さらにはインタビューやMCでの即応力までが同時に問われるようになった。

勉強不足や無自覚は許されにくくなり、ポップスターは単なる「才能のアイコン」にとどまらず、複数の能力を横断的に試される総合競技のプレイヤーへと姿を変えている。
ポップは夢を叶える場所であり続けながらも、より複雑で可視化された環境をどう生き抜くかを示す、サバイバルのモデルへとその性格を変えつつあるのだ。

そういった状況のなかで、XGもアスリート的といえるトレーニングによって、結成以来驚異的な成長を遂げてきた。徹底的に鍛えられた身体感覚とパフォーマンス力、さらに知性も人格も磨かれたメンバーたち。その完成度の高さによって、多くのリスナーが心を動かされ、日常を乗り越えるための力を受け取っている。

自身と世界の未知に出会い「わくわく」していることこそが、XGの本質

けれども、新アルバム『THE CORE – 核』の1曲目“XIGNAL (The Intro)”を聴いた瞬間に、そんなストイックな印象にXGを当てはめるのはもったいないと感じてしまった。宇宙旅行を思わせるような没入感ある音世界に、「ヤバい!」と楽しそうに叫ぶメンバーの声がこだまし、“GALA”へと繋がっていく。

なんてわくわくするのだろう! ここには、「プロフェッショナルでよくできている」という感情以上に、高揚感に包まれながら自分の中から次々漏れ出てくる「わくわく」があるのだ。この期待感は、完成度の先にしか立ち上がらない種類のものである。しかもそれは、メンバー自身が自分たちに対して抱いている感情のようにも聞こえる。

思い返せば、筆者が以前7人にインタビューを行なった際も、サイモン氏と対話した際も、そのことを強く感じた。XGにとって、アスリート的であること自体は目的ではなく、夢を叶えるための手段でしかない。そして、それ以上に、自身と世界の未知に出会いわくわくしていることこそが、XGの本質なのだ。

アスリート化したポップスターは、通常、自己像が明確である一方、未完成さや偶然性がそのままの価値になりにくい。けれども、XGは自分たちを固定化せず、未定義なままでいるように見える。

徹底的に準備し訓練したうえで、あえて自己を固定しないという選択。だからこそ、『THE CORE – 核』を聴いていくと、不思議な浮遊感に包まれる。完成度は高いのに、次に何が出てくるか分からない──その予測不能さが、聴き手の感受性を意図的に宙づりにする。ジャンルも物語も人格もひとつに回収されないからこそ、どこへ向かうか予測できないという期待感。

なるほど、「わくわく」は管理できない感情だということに気づく。訓練や戦略では再現できない興奮こそが「わくわく」であり、XGはその再現不可能な感情を、完成度の先で無邪気に描いているのだ。

忘れてはならないのは、XGにおける未定義とは、「定義を拒否する」わけではないということ。それよりも、自分たちの核をしっかりと固定したまま、定義をあえて先延ばしにするという能動的な態度のことだ。

「宇宙」という視点=重力から自由になること

そしてXGの未定義性を支える核は、他でもない、音楽に宿っている。『THE CORE – 核』は、エッジィなガラージ曲“GALA”や、フューチャリスティックなR&B“NO GOOD”、軽快なダンスチューンの“HYPNOTIZE”、ポップパンクな“O.R.B”、正統派ブーンバップに乗る“PS118”等、実に多様な音楽ジャンルが投影されている。

https://youtu.be/IRXAUlcBgIk?si=hSzWFO2JtKte-PmP

だが、そのサウンドの核には、やはり一貫してヒップホップ / R&Bが据えられている。様々なジャンルを、2026年のヒップホップ / R&Bマナーを使って再編集したような音楽性だ。ギターが弾けるロックナンバー“O.R.B (Obviously Reads Bro)”すらも、やはり構造の重心はヒップホップ~トラップにある。このブレない軸が、本作の未定義な状態が生み出す「わくわく」を支えているように思う。

https://open.spotify.com/intl-ja/track/0N2Jzie4CuzYjdnQmedP1q?si=352b9148858844bc

ここで重要なのが、XGが掲げる「宇宙」という視点。自らを宇宙人と称し、「X-GALAXY」という銀河を描くような設定は、地球上の序列(ジャンルの正統性はもちろん、国籍や人種、ジェンダーまで)から一度距離を取るための観測点として機能している。明確な核があるからこそ、視点を宇宙に上げることができるのだ。拠点は地上に残したまま、重力から自由になる。この跳躍が、XGの「わくわく」を可能にしている。

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