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この世の中のムードで、無責任なこと、能天気なことは歌えない
─歌詞は最初どれから付けたんですか?
坂本:“おじいさんへ”です。
─ああいう軽やかなロックンロールっぽい曲は前作にもあったけど、歌詞が衝撃的でした。
坂本:できたときはちょっと恥ずかしかったし、さすがにどうかなと思ったんですけどね。勇気を持って出すと、だんだん後から効いてくるというか。ちょっと恥ずかしいぐらいが、ちょうどいいのかなと思いました。
この曲はまあ、自分の年齢も関係あるでしょうね。ちょっと自虐も入ってますから。でも、他にいろいろな意見を言う人はいました。麻生太郎のことじゃないかって言う人もいましたし、単なるほのぼのソングだと思った人もいます。聴く人の心の持ちようで、全然違うように聴こえるんだなと思いました。
─そこから次に歌詞ができた曲というと?
坂本:“正義”ですね。
─“正義”で歌われているような息苦しさも、これまで歌ってきたと思うんですが、そのフォーカスがはっきりしているように感じられるんです。
坂本:そうですか。だんだん(自分が)単純化されてきて、「もうそのまま言う」みたいになってきた感じなんですかね。
─タイトル曲の“ヤッホー”は?
坂本:あれも夏前には歌詞もできてました。
─前作『物語のように』(2022年)の“スター”みたいな、もうこの世にいない人たちへの思いを歌った曲かと最初は思ったんです。でも、もっと現世的な呼びかけでした。
坂本:そうかもしれないですね。“ヤッホー”も、“おじいさんへ”と同じで、ポロって言っちゃったみたいな感じでできたんですよ。先にできているメロディ―に対して、ポロッと言っちゃったことはなるべく採用するというのが自分ルールというか。当たり障りのない言葉よりも、ちょっと恥ずかしくても浮かんだ言葉を思い切り出すほうがいいのかなと思ってます。
坂本:「ヤッホー」は、英語にすると「Yahoo!」みたいな字面だけど、意味を調べたら登山用語で、遠くにいる人に自分の居場所を示すための言葉みたいなので、そういう意味でもすごくいいなと思ったんです。デザイン的にジャケットに「Yoo-hoo」って描いてあるといいかなっていうのもあります。
―ポロッと出てきた言葉だから響くものがあるのか、坂本さんの世間の空気や気分に対して「外していない」感覚を感じます。
坂本:マーケティングして、今世間がこうだから、こんな感じでいこうみたいなのではないんですよ。自分が日々生活していく上で自分が楽しくなれるやり方を考えると、これだとちょっと違うかな、みたいなのがいっぱい出てくる。そこくぐり抜けて合格ラインまで行ったものが曲になる。
今の自分が生きているムードの中でどう聴こえるかは、やっぱり影響されている気がします。もちろん自分とは全然違う感じ方をしてる人もいるだろうから、僕がやってるのは「自分の感じ方」ってことになりますけど。

─そこはずっと一貫してるじゃないですか。同調は求めていない。
坂本:自分が歌ってて最低限イヤじゃないみたい感じ……という程度ですかね。さすがにこのご時世に無責任とか能天気なことを歌ってたら、自分でも気持ち悪い感じになりますよ。それを跳ねのけてひたすらアッパーなこと歌えるぐらいの強靭な精神があるなら、それはそれでいいのかもしれないですけど。