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大宮盆栽美術館でVRゲームを体験レポ。ベッドタウン・さいたまの潜在意識に向き合う

2026.1.20

空想するさいたま

#PR #ART

ベッドタウンであるさいたまと「眠り」の関係

美術館のホール内に、作品体験用の一角が設けられている。VRゴーグルを装着してコントローラを握ったら、さっそく体験スタートだ。

映像やゲーム作品を制作し、死後の世界や夢、記憶などのテーマを表現する若手クリエイター・徐秋成。その作品『夢をみる、さいたま、仮に』は、VR技術を使ったゲーム作品だ。ゲームと言ってもモンスターを倒すわけではなく、キノコで大きくなったりするわけでもない。体験者はバーチャル空間の中で、電車に乗っている。車両内の椅子も網棚も吊り革も、ガタンガタンと響くリズムも、日頃私たちが乗車している電車そのものだ。ただ、少し変なところもある。窓の外には銀河のような景色が広がっており、しかも同じ車両内には……何故かリアルな象がいる。作品名の通り、この電車は「夢の鉄道」とでも言うべきものなのだ。

さいたま文化発信プロジェクト「空想するさいたま」夢をみる、さいたま、仮に 徐秋成

さいたま市は首都東京のベッドタウンだ。昼よりも夜のほうが人口の多い、みんなが眠るために帰る場所。そこから作家は、「眠り」そして「夢」こそがこの街の重要なキーワードであると考えた。そしてそこに、プロジェクトのお題のひとつである「鉄道」のモチーフを結びつけたのである。

作品『夢をみる、さいたま、仮に』プレイ風景

電車に乗ると妙に眠くなる、と感じたことのある人は多いと思う。作家はそれについて「一定のリズムや振動、音が、赤ちゃんが母親の胎内で感じる環境に似ているからだと言われている」と語る。なるほど車内は大抵とても温かく、言われてみればあのリズムは鼓動に似ているかもしれない。赤の他人どうしで混み合う公共交通機関内で母胎の面影を感じているなんて、ちょっと変な話である。

そして人が夢を見るのは、熟睡時ではなく浅い眠りのときだ。夢は無意識下の感情や願望の発露であり、なんでもありのシュールな世界である。作家は「夢を見ているときこそ人間がもっとも自由を感じられるときだ」とも語る。赤の他人どうしで混み合う公共交通機関内で母胎の面影を感じて安心した挙句に、心の最深部をちょっと滲み出させちゃっているなんて……やはりつくづく変な話ではないか。

私たちの脳は夢の中の出来事に刺激を受けて、眠りながら笑ったり泣いたり時には叫んだりもする。それは脳にとっては確かに体験した現実でありながら、実際の現実ではない。認知できるけれど実体がないという意味で、夢と本作のようなバーチャル空間はとてもよく似ていると言えるだろう。

体験者はVR世界の中で先頭車両に向かって歩く。作品は4つのステージ(車両)で構成されており、面白いのは、それぞれがさいたまらしいモチーフで構成されているところだ。

まず賑やかな「鉄道」に始まり、「人形」の車両では巨大な雛飾りをよじ登る体験ができる(※)。そして3つ目の車両では、なんと空間全体が海になって海洋生物が泳ぎまわっていた。これはもしかして、「海なし県」と言われる埼玉県民の夢(憧れ?)なのだろうか。海車両のいちばん奥には温かみのある不思議な球体が浮かんでいて、生物の卵のような存在感を放っていたのも印象的だった。

※さいたま市岩槻区は江戸時代の名残で日本有数の雛人形や日本人形の産地として知られている。

そして最後の車両に踏み出すと、風景は一転。体験者は鳥くらいの高さからさいたま市のリアルな街並みを見下ろし、ゆったりとした空中散歩のような時間を楽しむ。風景の中心にあるのは、体験者が今まさに実在している「さいたま市大宮盆栽美術館」だ。そこからは一本の松の木が伸び、静かに成長を続けている。カメラが大きく旋回して松の木を根元から仰ぐと、なんだかこの盆栽がこの街における世界樹のように見えてくる。木のまわりには松の花粉のようにも鳥の影のようにも見える光の粒がふわふわと漂っていて、私にはそれが人の生命のように思えた。個人の生は光の粒になって空に消えていくけれど、この土地で誰かが生きた痕跡は蓄積して大樹の一部となっていく。

夢から醒めたとき、残っているのは「どんなことが起こったか」という内容ではなく、あくまでも心の動きであり、感覚である。本作でもきっと作品中の具体的なギミック一つひとつではなく、体験後に残った何となくの感覚こそが重要なのだと思う。子どものように自由だった感覚、よくわからないけど懐かしかった感覚……いろいろあるけれど個人的には、命のめぐりを感じて切なくなって、でも揺るぎなくそこに育っていく盆栽の存在に深い安心感を覚えた。

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