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アニメ音楽制作で重要な「目的」と「音楽性」のバランス
─ラスマスさんにとってアニメ音楽の制作はキャリアを語る上で非常に重要なプロジェクトだと思いますが、アニメのストーリーに音楽をつけていくという作業は、クリエイターとしての自分にどういうフィードバックがあるのでしょう?
ラスマス:実は、アニメ音楽を作り始めたとき、ダンスミュージックを作り始めたときと同じ「壁」に直面しました。それは文脈(目的)を理解しつつも、音楽そのものが支配的になりすぎないようにすることです。
ラスマス:アニメや映画の主役は「ストーリー」です。もし僕が自分のビジョンを押し出しすぎてしまえば、本来の「アニメのため」という目的を果たせなくなります。なので、アニメ音楽制作の経験は、「常に目的を心に留めておくことの大切さ」を教えてくれました。
こうしたアニメ音楽の制作の経験を経て、ダンスミュージックの制作は少し楽になったと思います。「作品の目的」と「自分の音楽性」のバランスをとることが容易になったので。
─ハウスのトラックを制作する時と、アニメやゲームの音楽を制作する時では、考え方にどのような違いがありますか?
ラスマス:最も大きな違いは、「即効性」と「文脈」です。ハウスミュージックでは、時に1小節のなかだけで成立するような即効性のあるグルーヴが求められますし、楽曲はそれ単体で完結していなければなりません。
一方で、アニメやゲームでの音楽制作では、セリフや効果音のために「余白」を残す必要があります。また、まだ制作途中の映像素材やプロットをもとに制作することも多く、文脈を読み取る力が非常に重要になります。そういう意味では、ハウスのトラックを作るときよりも考慮すべき点が多く、自分で完全にコントロールできる範囲は限られています。
─もしいろいろな制約や「目的」を一切なしにして、自分がやりたいことだけをやったらどういう音楽になるのでしょう?
ラスマス:それはすべてのクリエイターにとって「悪夢」のようなものだと思います(笑)。
─悪夢ですか(笑)。
ラスマス:だって、それはまるで境界線のない無限に広がるキャンバスを渡された画家のようなものです。なにをしたらいいのか途方に暮れてしまうと思います。
ただ、実は今、あえてその「境界線のないプロジェクト」に挑もうと考えているんです。ここ数年、オーケストラを使ったアレンジを突き詰めることが、自分のなかで重要になってきていて。
2024年に『Where Light Touches「A NIMA Story」』というネオクラシカル的なアルバムをリリースしました。その制作は、Dolby Atmosを駆使した実験的な試みでしたが、本当に素晴らしい経験で、次のプロジェクトは、そこからさらに一歩踏み出したものにしたいと思っています。
ラスマス:具体的には、映画音楽のようなシネマティックな壮大さと、僕の根源であるハウス、そしてボーカルを融合させて、物語の重厚さと、ダンスミュージックが持つ感情にダイレクトに訴える力を結びつけたいんです。これまでの僕の音楽人生の異なる側面が、1つの大きな流れとして結実する作品になるはずです。
つまり今、境界線なしに自分の感情に従うなら、これまでのすべてのルーツが溶け合った、壮大にミックスされたような音楽になるでしょうね。