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音楽家としての2つの「原点」
─今回のハウストラックの連続リリースはラスマスさんにとって「原点回帰」と言えますでしょうか?
ラスマス:実は、そうとも言い切れないんです。僕には2つの異なるルーツがありますから。
1つは、アーティストとしてのルーツとなったハウスミュージック。そして、もう1つは音楽におけるもっと根源的なルーツとして、ラテン、ソウル、ジャズがあります。僕にとって「原点」は、この2つの階層があるということです。
─お父様もジャズミュージシャンですし、ラスマスさん自身もピアニストとしてキャリアを始めています。そこからなぜ、ハウスに惹かれたのでしょう?
ラスマス:そこには、ある種の「反抗心」がありました。子供の頃から父のコンサートには通っていましたし、父は素晴らしいミュージシャンとして尊敬もされていましたが、ジャズミュージシャンとしての人生はどこか苦労が多いようにも見えました。当時の僕の目には、ジャズの世界が少し閉鎖的なものに見えてしまっていたんです。
ラスマス:だからこそ、「もっと広い世界にジャズを届けたい」という想いが芽生えました。当時夢中になっていたアシッドジャズやダンスミュージックに、自分の好きなラテン、サンバ、サルサなどを乗せれば、より幅広いオーディエンスに新たな魅力として届けられるのではないか。そうした使命感に近い想いが、僕をハウスミュージックへと駆り立てていきました。
─その当時はどんなアーティストに影響を受けていたのでしょうか?
ラスマス:2000年から2001年頃、僕がストックホルムで本格的にダンスミュージックに取り組み始めた当時のシーンは、UKガラージとUS影響下のソウルフルハウスという、2つの流れに分かれていました。
僕はMJ ColeやArtful Dodgerに代表されるUKガラージのメロディックな側面から強い影響を受けていましたが、同時にMasters at Work、Blaze、ケニー・ボビエンといったアーティストを通してUSハウスにも強く惹かれていました。
ラスマス:また同じ頃、日本のアーティストであるMONDO GROSSOからも影響を受け、彼の感情豊かなダンスミュージックへのアプローチは、今も変わらず自分のなかに深く刻まれています。
─当時のスウェーデンのダンスミュージックシーンの盛り上がりはどうでしたか?
ラスマス:非常に活気に満ちていました。ナイトライフという意味でも、あの頃はスウェーデン史上でも屈指の充実した時代だったと思います。SNSがまだ存在していない時代で、スマホで撮影して記録することよりもダンスフロアで音楽に身を委ね、その瞬間を生きることに集中していました。音楽とダンスを軸にした強い共有体験があり、そんな時代の一部でいられたことはとてもラッキーだと思っています。