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『ヒルマ・アフ・クリント展』
杉原:僕は話題になった東京国立近代美術館『ヒルマ・アフ・クリント展』に、すごく歴史的な反復性を感じることがあって。ヒルマは交霊術とか、今で言うスピリチュアリティに触れるような活動をしていた人ですけど、2025年の10月にソウル市立美術館で観た『ソウル・メディアシティ・ビエンナーレ』のテーマも、まさに「交霊会」だったんですね。「e-flux」(※)の創設者としても知られるアントン・ヴィドクルがディレクターの1人で、スピリチュアリティみたいなものがここでも取り上げられてるんだということが印象的だったんです。
※アーティストであるアントン・ヴィドクルらによって創設された、オンラインのアートプラットフォーム
杉原:大正から昭和初期の頃を振り返ると、前衛美術家たちが労働の問題を扱うプロレタリア芸術に傾倒するのと並行して、シュルレアリスムのような夢や無意識の世界に目を向ける芸術も台頭してくるということが、おそらく歴史的に言えると思います。この5年くらいは美術の世界でもケアの分野に注目が集まった時代でしたが、そうした中である種の社会性や理屈にとらわれない領域を求める動きもまた現れているのかなと感じたり。あくまでも、妄想に過ぎないのですが。
スピリチュアルとか、1話目で南島さんが言った『ライシテからみるフランス美術—信仰の光と理性の光』展(アート振り返り座談会①を参照)のように、ある種の宗教性をどう考えるか、理性で回収できない領域をどう扱うのかは、今後重要になってくる予感がしています。
中島:酷薄なリアリズムがどんどんと広がる中で、イマジナリーなものに救いを求めている感じがしますよね。YouTuberでも今一番儲かっているのは心霊の話をする人たちらしいですから。
南島:僕も『ライシテ』展を観た時にヒルマ・アフ・クリントのことを思い出しました。またシュルレアリスムでいうと、ミヅマアートギャラリーでやっていた『MAD IMAGE』展出品作家の息継ぎさんを挙げられればと思います。息継ぎさんの作品には、戦中 / 戦後のシュルレアリスムと実存主義的ムードの奇妙な結びつきに似たものを感じて、歴史的な視点から興味を持ちました。他にも似た事例がいくつかあるので、それらを同時代現象としてみることもできるかもしれません。