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『ライシテからみるフランス美術—信仰の光と理性の光』
南島:次に取り上げるのは、宇都宮美術館で開催されて、2026年には三重県立美術館にも巡回する『ライシテからみるフランス美術一一信仰の光と理性の光』です。この展覧会は、東京大学でフランス語圏のライシテなどを専門とする伊達聖伸教授が学術協力していることもあり、研究者と学芸員による研究成果の賜物だと思います。完売でまだ現物は入手できていませんが、図録も大著になっているようですね。
中島:「ライシテ」ってどういう意味なんでしたっけ?
南島:ライシテは一言でいえば「政教分離」という意味ですが、本展を見るとその意味がなかなか複雑だということがわかります。基本的にはフランス革命以後の、フランス政府とカトリックの抗争の歴史を辿る章立てです。ただ、冒頭にイエス・キリストの復活の図を踏襲して描かれた、政治的権威であるはずのナポレオンの絵画があったり、政治と宗教、理性と信仰が切り離せないことが印象的でした。これはフランスだけでなく、アメリカの福音主義の台頭など今日的な問題にも通じますね。また、そもそもこんな複雑なテーマ展を国内のコレクションだけで構成している時点で驚異的に思いますし、出品作品も誰もが知るミレーの『種をまく人』やモネの風景画をライシテの文脈から読み解いたりしていて、面白いです。
2025年も来場者数が数十万人に及ぶ企画展がいくつも開催され活況を見せていましたが、その収益が反映されてこのような展覧会がしっかりと開催されるのは、美術館にとっても大事なことだと思い選びました。