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キャラの掘り下げの不足や、陰謀論の配信者の肯定という危うさも
ここまで本作を称賛したが、正直に言って気になることもある。その1つが、ヘビのゲイリーのキャラの個性や過去があまりエピソードとしては深掘りされておらず、物語上でも「被差別者の象徴」に止まっている印象があることだ。
ただ、劇中終盤でニックが、ずっと事情だけを知りながら救おうと追い続けていたゲイリーが誰であるかをようやく知る場面から、「内面を深く知らなくても、事情を理解し、手を差し伸べようとすることの価値」を示そうとする意図も読み取れる。観客が劇中のわずかな言動からゲイリーの気持ちを想像することも、本作において意義ある体験なのだ。

また、新しく登場したキャラクターであるビーバーのニブルズはクレイジーなほど行動力に溢れるキャラで魅力的なのだが、彼女はズートピアに存在しないはずの「爬虫類に対する豊富な知識」を持ち、「ズートピアの陰謀論を語るポッドキャスト」を配信している。
劇中でニックから「その情報源は信用できるの?」と疑問は提示されているものの、その信憑性の薄い情報や活動が、やや単純に肯定されすぎている印象があった点は、描き方として少し危険ではないだろうか。

しかしながら、「足りていないな」と感じるところがあるからこそ、続編でのさらなるキャラの深掘りにも期待できるとも思える。実際に、本作のエンドロール後には「『ズートピア』という作品で描くべきことが残っている」と思わせるシーンがあり、それは前述した「無意識の排除」かもしれないと、もう一度気付かされるという構図がある。
やはり、『ズートピア』は多様性がより尊ばれる今の時代でこその最先端の社会的派エンターテインメントだ。あと、ニックとジュディの関係性の尊さを、もはやファンが考える二次創作よりも見事に打ち出した、いわゆる「公式が最大手」な続編でもある。『ズートピア3』も心待ちにしたい。
『ズートピア2』

(c) 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
原題:Zootopia2 / 全米公開:2025年11月26日 / 日本公開:12月5日 / 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
コピーライト表記© 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
監督:ジャレド・ブッシュ(『ズートピア』、『モアナと伝説の海2』)
バイロン・ハワード(『ズートピア』、『塔の上のラプンツェル』)
オリジナル・サウンドトラック: ウォルト・ディズニー・レコード
日本版声優:上戸彩、森川智之、下野紘、江口のりこ、山田涼介、梅沢富美男、三宅健太、Dream Ami、髙嶋政宏、水樹奈々、柄本明、高橋茂雄(サバンナ)、熊元プロレス(紅しょうが)、高木渉、山路和弘、ジャンボたかお(レインボー)
【STORY】
“もふもふなのに深いメッセージ”で社会現象を巻き起こしたディズニー映画『ズートピア』の最新作。動物たちが人間のように暮らす夢の都市“ズートピア”。頑張り屋なウサギの警察官・ジュディと、皮肉屋だけど根はやさしいキツネのニックは、憧れの捜査官バディとして事件に挑んでいた。ある日、ズートピアにいないはずのヘビのゲイリーが現れたことで、その誕生の裏に隠された驚くべき秘密が明らかに。なぜ、この街には哺乳類しかいないのか?ヘビたちが姿を消した理由とは?ズートピア最大の謎を前に、正反対なジュディとニックの絆が試される―。