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街全体が息をしているかのような繋がり

前半を振り返った記事でも言及した通り、本作は、登場人物たちの見えにくい繋がりを大切にするドラマだ。都成(水上恒司)が第6話で会った小学生(瀬口直助)と父親(平原テツ)に、第10話で木場(板東龍汰)が遭遇したり、アレックス(厚切りジェイソン)と和服女(中村映里子)のカップルや、「はっきりいうて」が口癖のおばちゃん(川上友里)といった面々が縦横無尽に登場することで、街全体がまるで息をしているかのように描かれる。
また、第7話において、アレックスが電話口で和服女に別れ話をするスポーツバーの場面に続けて、里見(影山優佳)の部屋にいる里見と水町が、同じマンションに住んでいる和服女の「アレックス!」という叫び声を聞いて驚くといった、リアルタイムの繋がりもある。そして、第8話で月を見上げる水町と志沢(萩原護)の次の場面で、「12年前」を生きる若い男が月を見ているという時空を超えた繋がりもある。久太郎が同一回の龍二との会話で「空に輝く月ってのはさ、どっから見ても平等に美しいんだぜ」とのんびり言うように、そこに12年という時間の違いがあっても、月の美しさは変わらない。

さらに、同様の「繋がり」が、今は亡き水町の父と水町を、12年の時を経てもなおしっかりと結びつけている。「若い男」=シイは、水町が今も肌身離さず持っている「カラカラ」について「おじさん」=水町の父と交わした会話を元に、自分たちのバンドに「キノミとキノミ」という名前をつけ、戯れに交わした約束通り武道館でライブを行った。水町は、「ハンバーガーは幸せの象徴」だと思い、娘に「ハンバーガーショップを作ってると言っている」父親の思いを知ってか知らずか、経営難で閉店するはずだった「シナントロープ」の経営に奮闘している。暗がりに何カ月も潜んで折田父の帰宅を待っていた父の身に起きた悲劇の上に、「トンビが生んだタカ」である水町の今の青春と、彼女が仲間たちと作ろうとしている自分たちの「居場所」がある。しかしその居場所も、第10話冒頭でバーミンの指示で動く人々により、粉々に破壊されてしまった。