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暴力の裏に屈折した感情を幾重にも滲ませる染谷将太の演技

それまではただフルーツを食べてばかりいる不気味な男に過ぎなかった折田が、存分に暴力性を発揮し始めたのが第7話以降である。折田はシイの居場所を聞き出すためだけに龍二(遠藤雄弥)と久太郎(アフロ)を使ってカシュー(中山求一郎)を拷問し、最終的には殺してしまう。さらには、頑なに信じる「父のやり方」に従って二人組のうちどちらか一方を殺そうと思い立ち、久太郎まで殺す。映画『怪物』でも印象的だった柊木陽太が少年・折田を演じ、無邪気な狂気を見事に演じてみせた過去パートにおいても、彼は同じ「二人組のどちらかを殺す」方法を用いて、子どもだと油断していたおじさんを殺し、「若い男」シイと死闘を繰り広げたのだった。
本作において「折田」という存在は理不尽な暴力そのものだ。「真面目に人を殺すなんて、そんなもん、それこそ漫画だけの話」とおじさんは言ったが、折田は特に大きな理由もなく、これでもかと言うほど精神的な苦痛を与えながら人を殺す。まさに第4話で水町(山田杏奈)が言う「普段は果物食べてて温厚なんだけど、いざとなると時速50キロで走って鉈(なた)のような爪で襲いかかる」ヒクイドリのように、穏やかに微笑みながら。しかし、ただ怖い存在というだけでなく、暴力の裏に屈折した感情を幾重にも滲ませるところが、染谷将太演じる折田の魅力と言えるだろう。死んだ父親への過剰な憧れと、人と繋がれない孤独。少年のまま大人になってしまったような彼が抱える底知れぬ闇が覗くことで、龍二と久太郎コンビの、折田には「眩しすぎてこっちが見えてない」だろう友情や、おじさんと若い男の間に生まれたつかの間の仲間意識、「シナントロープ」の面々が水町のピンチに対して体を張って立ち向かうような連帯の美しさがより輝いて見える。また、折田に静かに寄り添い、時に母のように包み込む睦美を演じる森田想の演技も秀逸である。