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3rdアルバムはエッセイ集。モキュメンタリーとして紡がれる言葉の源
ー途中でも言ってくれたように、歌詞は曲ごとに主人公がいて、心情やストーリーが描かれている。その作家性も今回確立されたように思います。
アカツカ:ファーストにもセカンドにも主人公を設定してストーリーを作る曲はあったんですけど、今回5曲ぐらい作ったあたりで全部そういう曲になっていることに気づいて。それならコンセプトにした方が作りやすいかなと思ったんです。自分の訴えたいことや思想がめちゃくちゃあったとき、ただそれを羅列するだけだと陳腐な感じになってわかりづらいものになってしまう。どこの誰だか知らない人を妄想して書く方が筆が進みやすいんです。最初の頃は自分の思ってることをちょっとしたためたりもしたんですけど、多分今後もこの作り方がずっと続いていくんじゃないかな。

ーまずタイトルを決めて、そこから広げていくパターンが多いそうですね。
アカツカ:基本そうですね。まずメロディーとコード進行を作って、歌詞は完全に後からで。韻を踏んだりしてる方が聴き心地がいいかな、みたいなところから作ることが多いので、口に出しやすさとかを意識して作っています。なので、ストーリーとは言っても設定が細かい物語ではなく、主人公を自分の中に降ろして、「こういう人だったらこうするだろうな」というのを妄想して作ることが多いです。
ー簡潔だけど味わい深くて、エッセイを読んでるような気分にもなるんですよね。
アカツカ:ああ、結構エッセイ集だと思います。僕の実体験ではないけど、オムニバス的な感じというか、ショートショート的な感じなのかなという気がしますね。
ー実際に本を読むことが歌詞の影響源になってたりしますか?
アカツカ:いや、僕は活字NGの人なので、本は全く読まなくて。マンガもほとんど読まないし、ドラマも映画も舞台も観ないし。だから人生で物語に全然触れてきてないんです。最近『こち亀』にはまってアニメを全話見たんですけど、その影響は今回の歌詞には出てないし(笑)。人の歌詞も全く参考にしてないですね。
ーじゃあインスピレーション源はどこから?
アカツカ:それでいうと、ドキュメンタリーが大好きなんですよ。『家、ついて行ってイイですか?』とか『ザ・ノンフィクション』とか。あと、最近はテレビ局が過去の名作ドキュメンタリーをYouTubeに上げてて、そういうのもよく見ます。「俺がこの人の立場だったらどう思うだろう?」みたいなことを見ながらよく考えるので、そこからの影響はすごくありますね。
今回のアルバムでも、例えば“万祝”だったら、結婚式当日を迎えて、過去の恋人のことが忘れられない女性の気持ちを歌ってるんですけど、別にモデルがいるわけじゃないし、もちろん僕の実体験でもない。ドキュメンタリーを見ることによっていろんなシチュエーションを妄想しているので、そういうプロセスが曲作りに反映されているんだと思います。
ーなるほど。3分間のポップスでも主人公が置かれた状況や心情が臨場感を持って伝わるのは、そこが背景になってるんですね。
アカツカ:あと僕はスポーツにおける選手のドラマとかもすごく好きで。ボクシングがめちゃくちゃ好きなんですけど、ボクシングもドキュメンタリーなんですよ。どういうバックグラウンドを抱えてて、なぜ今このリング上で戦っているのか、そういう情報を知ることによってより熱中できる。作り物じゃない生のものがすごく好きなんですよね。そこは歌詞においてもかなり影響があると思います。僕のドキュメンタリーではないというだけで、架空のドキュメンタリー、モキュメンタリーみたいなことを書いてるのかなと、今思いました。
