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藤原さくらが語る健やかな人生の歩き方。10年の活動でたどり着いた「Let It Be」の精神

2025.12.15

藤原さくら

#PR #MUSIC

デビュー10周年を迎えた藤原さくら。この10年、彼女は様々な経験を通じて「Let it be」という生き方に辿り着いた。理想の自分を追い求めることから解放され、ただ目の前にあるものを感じ、恵みとして受け止める。

今年2025年にリリースした楽曲“Angel”、“scent of the time”に表れているその姿勢は、音楽を長く、楽しく続けていくために、彼女が見つけたものだ。30歳を目前に控え、働き盛りだからこそ生じる理想の自分と現実の自分のギャップ、SNS社会がもたらす際限ない他者との比較──多くの人にとって心当たりがあるであろう息苦しさから、彼女はどのように自由になったのか。

2026年2月の日本武道館公演という大きな挑戦を前に、その足取りはとても軽やか。健やかな人生の歩み方について、話を聞いた。

藤原さくら(ふじわら さくら)
1995年生まれ。福岡県出身。シンガーソングライター。天性のスモーキーな歌声は数ある女性シンガーの中でも類を見ず、聴く人の耳を引き寄せる。ミュージシャンのみならず、役者、ラジオDJ、ファッションと活動は多岐に亘る。2025年3月にデビュー10周年を迎え、2026年2月18日(水)に、6枚目となるアルバム『uku』をリリース予定。2026年2月23日(月・祝)には、藤原さくら初となる武道館公演「藤原さくら 10th Anniversary 武道館大音楽会」を開催予定。

10年間で変わった音楽との向き合い方、脱ぎ捨てた「理想の自分」

―まずはデビュー10周年おめでとうございます。アニバーサリーならではの活動をしながら、ここまで積み重ねてきたものを実感されている最中かと思いますが、いかがですか?

藤原:最初はあまり実感がなかったんですけど、周りの方たちからお祝いの声をいただいたり、2024年の6月から休止していたライブ活動を復活していく中で実感が湧いてきたって感じですね。ほかにも昔の曲のMVを作り直したり、今までの軌跡を辿るような活動をしながら、「本当にいろいろなことに挑戦させてもらった10年だったな」と実感してます。

デビュー10周年を記念して、過去リリース楽曲から新たにミュージックビデオを制作するプロジェクトを行なっている

―ライブを再開されて久々にお客さんと対面した時は、どのようなことを感じましたか?

藤原:去年、発声障害などフィジカルの面で不具合が出てライブ活動を休止したんですよ。復帰するまではライブをすることへのプレッシャーや、「歌えないんじゃないか」という怖さがずっとあったけど、人前に出てライブをする回数を重ねる中で、少しずつ自信を取り戻していきました。

今の私は、自分にできないことよりも、できることにフォーカスする考え方が身についてきていて。応援してくれているファンのみなさんには、その過程を見守ってもらっているなと思います。

―自分ができないことよりも、できることにフォーカスする考え方になぜシフトできたのでしょう?

藤原:できないことにフォーカスすると、落ちるだけだと分かったからですかね。やっぱりすっごい落ち込んじゃったんですよ。「もう歌うの無理かも」って。耳管開放症という、あくびをしたら開くところが開きっぱなしになる病気で。私の場合、1時間以上歌うとそこが開いちゃって、ピッチがとりづらくなるのがストレスだったんですよ。でも歌えるっちゃ歌えるから続けてたら、次は喉にきたりして。

―身体がアラートを出していたのかもしれないですね。一旦、休もうって。

藤原:病気になった方の中には「何が自分のストレスになっていたのか改めて考えるきっかけになった」とおっしゃる方も多いじゃないですか。私も、今までできていたことができなくなったことで、「自分がより楽に、楽しくやれる方法が別にあるのかも」と考えるようになって。症状が出たことが、自分の思考の癖を解きほぐすきっかけになったんですよね。今となっては必要なプロセスだったんだなと、思えるようになりました。

―そうした経験を経て、自分自身や音楽への向き合い方が変わっていったんですね。

藤原:そうですね。考え方も、活動のしかたも、お休みのとり方も変わりました。今までの私は、考え込み過ぎていたというか。自分の中で勝手に「have to」にしてしまっていたものが多かったんです。「私はこういうふうにいなきゃ」「この曲はこのキーで歌わなきゃ」とか。きっと「こういうふうに見られたい」というエゴや、「理想の自分」に囚われ過ぎていたんでしょうね。

藤原:そうやって考え込み過ぎるのではなく、直感的な部分を信じるというか。自分の身体が楽だと感じるとか、純粋に楽しいと思うとか、音楽を初めて好きになった頃の童心とか、そういうことを大事にしていきたい。繕っているものを全部脱ぎ捨てて、ありのままで、今目の前にいる人や目の前で起きている出来事を感じられるようになりたいなと思うようになりました。

―その変化に影響を与えたものは?

藤原:周りのジャズミュージシャンとの活動ですね。みんないい意味で子どもっぽいというか、今起きている事象に対してすごくシンプルに向き合っているんですよ。ただ今を楽しんでいる。ミスタッチもまた楽しむくらいの遊び心があって。そういう人たちと一緒に音楽をやることが、セラピーになっている気がします。

人生レベルでの「メリハリ」と「足るを知る」ことの大切さ

―藤原さんは、もうすぐ30歳のお誕生日を迎えますよね。同世代の人たちも、理想の自分と実際の自分とのギャップに悩むことがあると思います。そんな中で「こうあるべき」という理想を手放すのは、勇気がいるし、葛藤がつきものだと思うのですが。

藤原:私の場合、勇気を出したというよりも、なるべくしてそうなったという感覚が強くて。前のままでは続けられなかったんじゃないかなと。もちろん成長したいという気持ちや向上心を失ったわけではなくて。仕事を頑張っている自分のこと、めっちゃ好きですし。だけど、メリハリが大事だということに気づいたんですよね。

—メリハリですか。

藤原:ずっと頑張り続けていると、ここぞという時に疲れちゃっていたりするし、逆にずっと休んでいると、ここぞっていう時に力が入らなかったりする。人生レベルでのメリハリが、これからの時代、より必要となってくると思うんです。

毎日情報が発信され続けていて、新しい情報や、自分より優れた何かを持っている人の存在を日々、目の当たりにするわけじゃないですか。上には上がいて、もっと成功している人、もっとお金持ちな人がいて……際限のない話だし、ここに囚われていたら一生満たされないと思う。それって不幸だし、全部が「やらなきゃいけないこと」になっちゃうなんて、つまらないなって。

―そうですよね。

藤原:もちろん私も「こういうことをやってみたい」という気持ちを持っているし、プロとして人前に立つ以上、向上心は持ち続けるべきだと思ってます。だけど、同時に「足るを知る」というか「今自分が持っているものや周りにいる人たちって本当に財産だな」「かなり満たされているな」という感覚もあるんです。その感覚をちゃんと持ちながら向上心を持たないと、ずっと「私なんて」って思っちゃう。本当に、時代がそうさせているというか。

今はそのメリハリについて、すごく考えてますね。どういうバランスだったら、「楽しく続けられるんだろう」って。やっぱり私たちはマシーンではないから。私はいろいろなことに興味が移り変わるタイプの人間だけど、音楽は何があっても好きで、続けてきたものだから、嫌いになるのはもったいないなと思っていて。

そのためには、適度に旅行に行ったり、「作らなきゃ」と思わずに過ごす「無の時間」があった方がいいなと。インプットとアウトプットのバランスは、これからまた変わっていくのかなと思ってます。言ってもまだ10年なので。

身を委ねることでたどり着いた「Let it be」の精神

―「仕事を頑張る自分」以外で、最近「こんな自分もいいな」と思った瞬間はありましたか?

藤原:制作期間に、山梨で一人合宿みたいなことをしてたんですよ。朝起きて湖畔に座って、光が反射してキラキラって揺れたり、緑がザワザワって音を立てたりするなかでボーッとして。携帯を持たずに、湖の周りをサイクリングして。その時の自分は、景色の一部になって、ただ存在しているだけだったというか。別に何をしなければいけないわけでもない、そういう時間ってめちゃくちゃ大事なんじゃないかと改めて思ったんですよね。何もしないで、ただ溶ける、みたいな。

―その時の体験が“scent of the time”という楽曲になったんでしょうか?

藤原:はい。まさにその時に書いた曲です。さっき話した通り、今までは「私ってこう」「こういうふうになりたい」という理想像を自分の中で作り上げてたんですけど、山梨で周りの景色と一体になる感覚を覚えた時に、そこから解放されたというか。

https://youtu.be/VEDii8UtOGg?si=BfGbpfqSITHiL2YT

藤原:<bye bye myself>と歌ってますけど、追えば追うほど「自分って何?」って分からなくなっちゃうと思うんですよ。そんなのは日によって違うし、誰と一緒にいるかによって変わると思うし。逆に自己を手放して、周りと溶け合うことで、自分のことがかえって分かるようになる、ということもあると思うんですよね。

—自然と溶け合う。流れに身を委ねる。自己を手放す。それが今の藤原さんのモード?

藤原:そうですね。「Let it be」って本当にいい言葉じゃないですか。最近トム・ハンクスにめっちゃハマってるんですけど、『フォレスト・ガンプ』(※)とか、超「Let it be」なんですよ。全部決まってなくて、気づいたらこの人と出会って、こうなってた、みたいな。予定調和じゃなく、そっちの方が面白い。やっぱり面白い方へ行きたいなと私は思うので。

※1994年公開、トム・ハンクス主演のアメリカのコメディドラマ映画。知的障害を持つ純粋で誠実な主人公フォレスト・ガンプが、偶然やひたむきさから様々な出来事を経験し、成功を収めながら、愛や友情の物語を紡いでいく作品。

―“Angel”の歌詞にも<bye>という言葉が共通して出てきますね。この曲では<ghost>に別れを告げて、<angel>に導かれていく過程が歌われていますね。

https://youtu.be/Uw5txewSrq0?si=3ICh6rpEKwFfYS-N

藤原:周りの人から「これ好きそう」と教えてもらった映画や本が、全て同じようなメッセージを自分に言ってくれているように感じたことがあって。同じように、バンドメンバーや一緒に音楽を制作している方々……私の元に現れた全ての人とは、出会うべくして出会っていると思うんです。そういう自分に降りかかる全ての物事が<angel>なんだという気持ちを、この曲には込めました。

―“scent of the time”や“Angel”も収録される6枚目のオリジナルアルバムを現在制作中なんですよね?

藤原:前作『wood mood』と同じく、石若駿さんと一緒に作ってます。あと1曲半、歌を録ったら終わりです。

―ということは、全貌も見えてきたところでしょうか?

藤原:かなり見えてきました。いろいろなことに挑戦しましたし、面白いアルバムになりそうです。前作の『wood mood』の先の景色というか。風通しのいい、カラッとしたアルバムなんですけど、海の中にダイブして、よくわからない桃源郷みたいなところにたどり着く……みたいなシーンもあったりして。けっこう面白いアルバムだと思います(笑)。

https://open.spotify.com/intl-ja/album/3zgP098RNAttHecZ1MZ8YU?si=YDQJpIa1Ru-hQHbrdAnZsw

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