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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

『exPoP!!!!!再会 2025』レポート 総勢44組のアーティストが渋谷で紡いだ「再会」

2025.12.22

#MUSIC

11月9日(日)、NiEWが主催する音楽イベント『exPoP!!!!!再会 2025』が開催された。『exPoP!!!!!』は2007年に始まった無料音楽イベントで、基本的には月に1回、渋谷のライブハウスSpotify O-nest で開催されている。18年目となる今年、その特別編として渋谷の全7会場を舞台としたサーキット型の大規模有料イベントとして開催されたのが、今回の『exPoP!!!!!再会 2025』である。

舞台となった会場は、Spotify O-EAST 、Spotify O-WEST 、duo MUSIC EXCHANGE 、WOMB LIVE、clubasia 、7th FLOOR 、そしてもちろん、Spotify O-nest の全7会場。この記事では、その当日の模様をレポートする……のだが、レポートと言っても僕1人 で会場を回ったので、当たり前だが、全アクトを観れているわけではない。

なので、「ひとりの音楽好きはこんなふうに『exPoP!!!!!再会』を回ったぜ」くらいの体験記として読んでほしい。ただ、それでもレポートなのであまり偏りが出ないように、すべての会場を回り、各会場で1組ずつ、(完全ではないけれど)なるべく、フルでライブを観るようにした。

初出演も「再会」も入り混じるラインナップ

イベントは13時にスタート。「やっぱり『exPoP!!!!!』と言えばO-nestでしょ」ということで、まずはO-nestに行き、風呂敷のライブから僕の『exPoP!!!!!再会』はスタートした。

風呂敷

風呂敷は、uminecosoundsというバンドでも活動していて、幡ヶ谷のカレー屋さん「ウミネコカレー」の店主でもある古里おさむによるバンド。いきなり「もう、この日のベストアクトなんじゃないか」と思うくらい素晴らしかった。生活からまっすぐ歩いてロック、という質感の音楽。生活と言っても「豊かで丁寧な暮らし」みたいな幻想じゃなくて、痛みとか、忘れたと思ったのに思い出してしまうこととか、食べて排泄することとか、たくさんの喜びとか、手放せない祈りとか、そんな様々が複雑に混ざり合うものとしての現実の生活と、このロックは地続きにある。そんな感じがした。

朝からリストバンド交換に並ぶ行列ができていた

風呂敷のライブをフルで観た後はduo MUSIC EXCHANGEに移動して、浦上想起・ミニマム・コントロールを観る。『再会』と銘打ちつつ、この日は『exPoP!!!!!』初出演のアーティストもたくさんいるようで、浦上想起もその1人。僕は、彼のライブパフォーマンスを観るのはこの日が初めてだった。浦上がキーボード、そして、ギターとドラムを招いたトリオ編成でのライブで、3人全員がお揃いのキャップとサングラスを身に付けている。ジャズ的なフリーキーさもありつつ、浦上の歌に郷愁を感じさせる儚さと優しさがあって、そこにとても魅了される。演奏は尖っているのに、浦上想起の人柄だろうか、魅惑的なまろやかさがアンサンブル全体を包み込んでいた。

浦上想起・ミニマム・コントロール

その後は、Maika Loubtéのパフォーマンスを観るためにWOMB LIVEへ移動。会場の扉を開けば、それまでの2アクトとはまったく違うハイパーな照明が空間を照らし出していて、ステージ上ではMaika Loubtéがしなやかに体を躍らせながら歌っている。僕もビートに合わせて体を揺らす。

Maika Loubté

12月に出る新しいアルバムのタイトルは『House Of Holy Banana』と言うらしく、そのアルバムからの新曲を披露する前に、MCでマイカは「本当の居場所がわからない」という感覚について話していた。居場所がわからないからと言って、自分の「ポジション」ばかりを追い求めてしまっては本末転倒なのだろう。マイカの言葉を聞きながら、僕の頭の中には「帰る家を探しているんだ」と言っていた『No Direction Home』のボブ・ディランと、“Democracy”で「私は今夜、右でも左でもなく、家にいる」と歌ったレナード・コーエン、そんな大好きな2人     の顔が浮かんだ。印象的なライブだったので、帰りに物販で不思議なステッカーを買う。

WOMB LIVEの外に出ると、雨で湿った渋谷の路上。そこをてくてくと歩いてclubasiaに行き、和久井沙良のライブを初体験。普段は3人以上のバンドやデュオなど様々な編成でライブをやっているそうだが、この日はソロ。しかし、単なるピアノ弾き語りという形ではなく、エレクトロニックなサウンドも駆使した目まぐるしいパフォーマンス。その奔放な自由さと、あるいは個であるがゆえの悲しみで、いろんな境界線を越えていき、たったひとつの音にもたくさんの歴史を刻み込める才能なのだと痛感する。

和久井沙良

『exPoP!!!!!』に初めて出たのが2023年らしく、それまでライブで演奏する機会があまりなかったようで、鮮烈な体験だったというその初出演時のこと(映像はこちら)を振り返って話す姿も印象的だった。音楽を演奏するとき、観客に話しかけるとき、本当にコロコロと表情が変わる人で、そういうところもよかった。    

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