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6年で描き切った三部作が、時間のルールを定義した
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』から続編『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』(1989年)、そして『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』(1990年)へ。もともとシリーズ化の構想はなかったというが、ゼメキス&ゲイルのアイデアが膨らみ、物語は三部作となった。
人気作品のリメイクやリブートが顕著な昨今だが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズはこの3本かぎり。わずか6年のうちに製作された、たった3作の映画が40年もの年月に耐えたのだから、やはり映画史上もっとも稀有なシリーズと言っても過言ではないだろう。

そのかわり、フィルムメイカーたちはその影響をスクリーンに表現してきた。冒頭に触れた『アベンジャーズ / エンドゲーム』は、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』方式とは異なるタイムトラベルを描くには、わざわざそのタイトルを参照し、否定しなければならないことを示している。
そもそも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』におけるタイムトラベルは、過去・現在・未来が一本の時間軸でつながり、過去での行動がそのまま未来を書き換えてしまうという発想に基づいている。複雑な設定でありながら、因果関係を視覚的に示すことで観客に直感的な理解を促した点こそ、本作がタイムトラベル映画の基準となった理由である。
近年の作品では、DC映画『ザ・フラッシュ』(2023年)は、タイムトラベルで母親の死を回避したことにより主人公の運命が変わってしまう、まさに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』的ストーリー。
また、スピルバーグは『レディ・プレイヤー1』(2017年)でデロリアンを象徴的に登場させ、人気アニメ「リック・アンド・モーティ」の主役コンビはマーティ&ドクをパロディにした。
そのほか、現在ファイナルシーズンが配信され話題になっている『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のシーズン3では、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が公開された1985年が舞台の世界ということもあり、実際に劇場に観に行くシーンが存在するなど、劇中にさまざまなオマージュが散りばめられている。
このようにさまざまな映画やテレビ番組でシリーズのオマージュやパロディが繰り返されてきたのだ。