INDEX
男性視点から描かれる、「らしさ」への抗い
こうした点から見ると、『晩餐ブルース』は特に、がむしゃらに働くということで得られるものは何なのかという疑問を投げかける。主人公の家はゴミ屋敷寸前の状態であり、ベッドに横たわって仕事のメールに返信しているときには、知らず知らずに涙が出てしまうほどで、彼には心のケアや休息が必要であるということが視聴者にもすぐにわかるのである。
『こっち向いてよ〜』においては、最初からかなり家父長制に対する疑問がストレートに描かれている。特にこのドラマで重要なのは、向井くんが、元カノである美和子(生田絵梨花)に対して、自分がしっかりした男になって「守ってあげたい」ということを言ったことが原因で別れを迎えている点だ。そのエピソードを聞いた洸稀は、「守るって何?」と聞き返すのである。このドラマは1話から、「男性が守り、女性は守られるもの」という構図に対しての疑問から始まっているとわかり、そこが面白かったのだ。
では『じゃあ、あんたが〜』はどうだろう。勝男は鮎美と同棲している間は、料理は女性が作る物であると思っており、性別役割分業に縛られている人物であったが、彼女にプロポーズして振られたことで、自分でも料理を作るようになり、性別役割分業の概念から離れることに成功する。不器用ながらも料理に奮闘する様子を応援したくなる視聴者はたくさんいたが、それは、性別役割分業から離れる作業でもあったため、応援したくなったということもあっただろう。

勝男の料理は、『晩餐ブルース』と同じく、自分の暮らしが仕事一辺倒であったところ(それは鮎美の献身的なケアがあってこそであったのだが……)から、自分で自分の生活を取り戻す、つまりセルフケアをするということも意味している。また、勝男や鮎美の両親が「結婚こそ唯一の幸せ」と考え、結婚を急がせること、それに応えられない2人のシーンを見ると、イエ制度に対する疑問も描かれているとわかるのだ。