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「ロックバンドをやる」という蓮沼執太チームのトライアル

―オリジナル作品を中心にざっくりと20年を振り返りましたが、こうしたキャリアを知ると蓮沼執太チーム『TEAM』を聴く視点も増えるし、面白いと思うんです。
蓮沼:本当におっしゃる通りだと思います。でもまあ結局、蓮沼執太は何をやってるのかわからないと思うし、でもそれでいいんです、って思ってる自分もいます。
佐々木:今回の蓮沼執太チームは、「蓮沼執太がロックをやった」と見ることができますよね。今までいろんなことをやってきた上で、ロックバンドという形式で何をするのかっていうトライアルであると。
―蓮沼執太チームの新作でジョン・マッケンタイアをエンジニアとして起用した経緯というのは?
蓮沼:まず、チームを結成したときからTortoiseのカバーをしてたんですよ。チームに関してはかなり例外的に「音を調和する」って認識がなくて、粗削りの状態でOKで、あまり深いことは気にしない(笑)。そう考えたときにジョンさんのテクニック、サウンド感が合うって思ったんですよね。
Tortoiseが久しぶりにアルバムを出したタイミングと偶然重なりましたけど、アルバムを作ってることも活動するなんてことも知らなかったですから。でも作品を作っているとそういう偶然ってあるんですよね。
―Tortoiseのジョン・マッケンタイアを起用した点で、今回の『TEAM』と、佐々木さんが言うところの1980年代から続いてきた音楽の進化のピークにあったサウンド、つまりポストロックやエレクトロニカなどとの関係性もあるのではないかと感じました。リスナーとして、今作のこうした感覚が「今、これが聴きたかった」と感じるところでしたが、そこは意識的にアプローチしようとしたわけではない?
蓮沼:全然してないです。でも全体的に、グリッチやエラーみたいなものを積極的に取り込んだ1990年代の香りのある音楽が再興しつつあるんじゃないか、とはリスナー感覚としてわかります。
佐々木:単純に言って、音楽、ファッション、あとアートには「20年周期説」があるんだと思ってます。要するに、20歳だった人が40歳になると、20歳の人に影響を与えるようになるという。でもそれは単純にリバイバルしているわけじゃなくて、渦巻き状に上昇しながら、新しい何かを切り開いていく。以前からファッションではY2Kって言われ出していたけど、それは音楽にも言える。