INDEX
多岐にわたる活動は個別バラバラではなく、すべてが有機的につながっている
―2017年にはU-zhaanさんとの『2 Tone』を発表しています。このあたりで生楽器と電子楽器の違いに本質的な差異はない、つまり響きがあり、記録されるという点で同じなのではないかという認識を持たれるようになったそうですね。それは、音楽家として新たな地平を見たというような感覚なのでしょうか。
蓮沼:いや、もう1stアルバムの時点で生楽器や環境音、電子音を組み合わせているので、自分の中にはそもそもあったあった認識だと思います。『2 Tone』に関しては、他者が鳴らした生の音を対等に扱うことができるようになったという感覚でした。それもフィルと似たような話なんですけど、自分と他者の関係性によって作品が変わっていくってことにより自覚的になった、ということだと思います。
―2018年のフィル名義の2枚目『アントロポセン』、2020年の蓮沼執太フルフィル名義の『フルフォニー』を経て、新型コロナウイルスのパンデミック以降の『unpeople』(2023年)でまたキャリアの転換期を迎えたようにも見えます。サウンド的には、それまでの経験で培ってきたもの携えて初期にやっていたエレクトロニックなものに回帰した側面がありますね。
蓮沼:そう見えますよね。でも単純な話、ずっとやっているんです。つまり『POP OOGA』のような路線をやめて、フィルをやっていたわけじゃない。技術力は上がっているし、U-zhaanはタブラで、灰野さんは歌で、というようにコラボレーションの蓄積があって、その都度、進化をしてこれたんじゃないかなという感覚なんです。
―実際に『unpeople』ではCornelius、ジェフ・パーカー(Tortoise)、灰野敬二さんをはじめ、個と個によるコラボレーションの密度や深度も上がっているように感じます。
蓮沼:『unpeople』は、コンセプトがないってコンセプトで、パツンとモードを切り替えて曲を作ったんで、またちょっと違うんですけど。やっぱり『unpeople』はいろんなことが積み重なってきた中、パンデミックで時間ができて曲を作ったのが形になっていったところがありました。
―2023年にはフィル名義の3枚目『シンフィル』もありますし、いろんな活動が同時に走っている感じがやはりありますね。
佐々木:蓮沼君のキャリアを見ると、前の作品を踏襲したり、単に変えたりというだけじゃなくて、どんどん横に広がっていく感覚がある。いろんなアイデアを実現していく馬力はやっぱりすごいと思う。それらが全部つながって、今までやってきたことがパノラミックに見えてくるという類い稀なタイプのミュージシャンだと思います。
蓮沼:そんなように言っていただき、ありがたいです。