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アニメーションだからできる方法で人間にアプローチした、1997年の2作品
今回、最初の公開から28年を経て、4K IMAX上映での劇場公開となった『もののけ姫』だが、ほとんど同時に宮崎駿の(事実上の)弟子にあたる庵野秀明が監督した『新世紀エヴァンゲリオン』の劇場作品が連続リバイバル上映されているのは、おもしろすぎる偶然だ。1997年7月12日に全国公開された『もののけ姫』に一週間遅れた7月19日に、『新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを、君に』も公開されているからだ。
当時17歳のいちばん厄介なオタクだった頃の筆者は、『もののけ姫』が持つ宮崎作品特有のイデオロギーの強い説教臭さに反発し、『エヴァンゲリオン』が体現する世紀末の投げやりな諦観に共感したが、今となってはどちらも好きだ。両方とも問題の多い作品だが、それぞれにアニメーションだからできる方法で人間にアプローチする意志を持っていて、エヴァでは身体や精神を自傷的に痛めつけてしまうことの悦楽を、『もののけ姫』では、例えば大きな白いオオカミや赤シシににまたがって山谷を駆けめぐるような躍動的な身体の喜びが存分に描かれている(筆者には、大きな白犬にまたがる夢をずっと抱いている友人がいる)。フィジカルなものへの執着があるからこそ、今でも両作はくり返し観ることができるのだと思う。
今日の世界はさらに混迷を極め、少し先の未来を予測することすら難しい。そのような時代に、『もののけ姫』そして旧劇場版エヴァは、観客にどのように届くだろうか?
