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「街と医療」を描くドラマを象徴する第6話

本作のユニークなところは、「医療ドラマ」にも関わらず、病院の外の世界がしばしば登場する点だ。それは、第1話の終盤、診療室の窓からの景色を見た滝野が「病院から出たら、分かれた世界だと思っていました。でも違うんですね。つなががってる」と言う場面から始まっている。
先天性の病気を抱えている弟の影に隠れていた兄・拓(杉田雷麟)の孤独を扱った第2話では、医療ソーシャルワーカー・苅谷(藤井隆)との連携が描かれた。第3話では、徳重と赤池が「街と会話」しながら歩くために、寄り道が多く、なかなか目的地に辿りつけないことに呆れる滝野の姿が描かれている。
第1話で患者だった横吹(六平直政)は、その後も滝野たちの行きつけの居酒屋の店主として医者たちの葛藤を見守っている。そして、街の住民の1人として、友人である半田辰の病気と向き合う。「街の大工」でもあった辰の死を描いた第6話は、そんな「街と医療」を描いた本作を象徴するような回となった。
在宅ケアを望む辰の家に、担当となった滝野と徳重が刈谷の車で向かう場面。険しい坂の上にある家に向かう車と、街の光景が俯瞰で映し出される。刈谷が、高齢者が多い街の現状を解説する。その後、辰は優秀な大工であり、彼がこの街の多くの家を建てたことが明かされる。辰にアトリエを案内され、滝野は、彼が作った家々の模型を見せてもらう。辰はそれを見渡しながら、単に自分の作った家の話だけをするのでなく、街全体の話をする。「ここは地盤がゆるくてね、だから杭を深く打ち込んで」「柱の位置も、南からの風が吹き抜けるようにちょっとずつ、ずらしてあるんですよ」。