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KiiiKiiiに見るK-POPの現在地。物語よりムード重視、Pinterest的な編集感覚

2026.2.24

#MUSIC

「物語」よりも「ムード」。2026年のK-POPの美学

—最後に、全体的な部分で、現在のK-POPシーンをどうご覧になっているか、少し聞かせてください。

セメント:変化がすごく速いので、こういう方向性があると一口に言えないところがありますが、最近「コンセプトよりムードを大切にする」みたいな雰囲気が生まれてきているなと思っています。LNGSHOTとかKiiiKiiiもそうですけれど、メッセージのためではなくて、グループを通して表現したいムードのために、曲とかMVがある、というのが、なんとなく今後の流れになっていくのかなと思います。

泡沫:ちょっと前までは世界的に、ストーリー性、叙事がすごく重視されていて、BTSとかはそうですよね。物語にのめり込んでファンになる、みたいなパターンが第2世代、第3世代ぐらいまでは多かったんですが、それだと(ファンが)途中から入りづらいんですよね。後追いで好きになった人が、いつでも入れていつでも出れるという意味で、ムードというのは、軽やかな感じで良いのかもしれません。

セメント:感情的な同一性は、ファンダムの中ではまだ重視されていると思うんですけど、物語的な共感はどんどん薄まっている気がする。どんどん断片化されて細切れになって、その場ですぐ伝わるものがあることが重視されつつあるような気がします。

つやちゃん:泡沫さんがおっしゃった通りで、物語や文脈が複雑になっていくと、どこから入ったらいいかわからない。その点、ムードってすごく入りやすいですよね。ファッションの世界でも、たとえば「英国トラッド」と言うと、歴史が長いし、どういう文脈があるのかやっぱり勉強して入らないとなかなか難しい。一方で、最近の「バレエコア」とか「コケットコア」といった、美学重視のファッションを表すキーワードは、文脈なしに「世界観が素敵」と入っていきやすい。韓国カルチャーはそこがすごく長けているなと思っていて、たとえばCOYSEIOという韓国のファッションブランドは、ちょっとNewJeansっぽいというか、ムードを重視したコンセプトでブランド展開をしていて、そういう入口・間口の広さが既存のブランドと違うと感じています。

COYSEIOのルック

泡沫:「○○コア」という言い方って、そういう意味なんですかね? 最近KiiiKiiiみたいな雰囲気が韓国で「ロッテリアの壁紙コア」っていう呼ばれ方をしているんですよ。2000年代前半に、韓国のロッテリアの店内によく描かれていた絵があって、イギリスのジェイソン・ブルックスというイラストレーターの作品らしいんですけど、その人の絵柄、その人の描く女性というのが、KiiiKiiiやHeart2Heartみたいな最近のY2K的なイメージと近いらしいんです。それでいま「ロッテリアの壁紙コア」とか「ロッテリアの壁紙をオンニ」っていう言葉が出てきているみたいです。イラストを見ると、なるほどという感じではありました。

ジェイソン・ブルックスのリール

セメント:全体的なムードとか、ものの断片を愛好するのは、Tumblr的な考え方だなと思っています。いま初期のTumblrの美学が見直されていて、またブームになってきているんですけど、ああいう感覚でKiiiKiiiとかが作られているのかなと思うと、これも広義の意味で2010年代リバイバルなのかなと思ったりもしましたね。

あと、いまの時代の感覚ということで言うと、K-POPで人気のパン・ジェヨプという監督がいて、LNGSHOTの“Moonwalkin’”、KiiiKiiiの“GROUNDWORK”、CORTISの“FaSHioN”、IVEの“BANG BANG”などのMVを全部その監督が撮っているんですけど、彼が撮っている映像って、なんかちょっと気持ち悪いんですね。空の色が青すぎたり、人々の肌がすごくマットで、マネキンとかシリコンみたいな雰囲気が出ている。ハイパーリアル、現実であって現実じゃないみたいな感覚があるんですね。

セメント:そういう美学を、ヨーロッパだとヤナ・ヴァン・ヌフェル(Yana Van Nuffel)という写真家が共有していて、彼女はジェイド(Jade)とかピンクパンサレス(PinkPantheress)、ローズ・グレイ(Rose Gray)を撮っています。共に、現実っぽいけれど現実じゃないみたいな、いまのデジタル世界に生きる若者たちの混乱みたいなものをビジュアルの中に取り込んでいる感じがすごくするんですね。そういう時代の感覚の変化を見られるのがK-POPの面白さだと思うし、今後もそういうムードとかを聴いていけたらなと思います。

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01. Delulu
02. 404 (New Era)
03. UNDERDOGS
04. MUNGNYANG
05. Dizzy
06. To Me From Me

https://kiiikiii.kr

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