ミン・ヒジンの新レーベル立ち上げや、BTSの復帰、BLACKPINKのニューアルバム発売もアナウンスされるなど、注目の動向が目白押しな2026年のK-POP。1月にリリースされたKiiiKiiiの2nd EP『Delulu Pack』も、音楽好きの間で大きな話題となっている。セメントTHING、つやちゃん、DJ泡沫の3人が、『Delulu Pack』の魅力を紐解きつつ、K-POPの現在地について語る。座談会「What’s NiEW MUSIC」第11回。
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『Delulu Pack』のPinterest的な編集感覚
—KiiiKiiiの2nd EP『Delulu Pack』が話題になっていますが、みなさんはどう聴かれましたか?
つやちゃん:クオリティ高いですよね。“404 (New Era)”とか“UNDERDOGS”とか、めちゃくちゃ完成度が高いなと思いました。決定的に新しいというよりは、近年のK-POPが築き上げてきた要素を集約して、整理し直したような印象を受けたんですよね。K-POP自体に、いろんな文化を統合していくという特徴があると思うんですけど、NewJeans感もあり、aespa感もIVE感もあって、いろんなものをごちゃまぜに統合してアーカイブ化している。それがミニマルに整理されてまとめられているのがポイントで、エディトリアル的というか、「全部盛りだけどスタイリッシュ」みたいな不思議な感じを受ける表現だと思いました。お二方はどうでしたか?
DJ泡沫(以下、泡沫):おっしゃる通りで、K-POPの特徴のひとつが、ゼロから新しいものを作り出すというより、編集能力が高いというんですかね。いろんなところから取り入れてきた要素をスタイリッシュにまとめるのに長けていて、その結果なんとなく方向性があるというのが長年の特徴かと思うんです。NewJeansもいろんなものを編集した表現だと思うんですけど、NewJeans以降の新しいものをプラスしてぎゅっと詰めたパッケージングで、「シールがいっぱい入っているバック」みたいなEPだなと思いました。
セメントTHING(以下、セメント):エディトリアル感みたいなものはすごくありますよね。ミュージックビデオが象徴的で、ホームビデオだったり、「Dance Dance Revolution」みたいなやつだったり、The Supremesみたいなシーンがいきなり出てきたり。いろんな要素を細切れにしながら、それを編集でひとつのものにしている。“404 (New Era)”という曲も、いろいろな過去のK-POPの要素を感じさせるものがありつつ、その細部のセンスの面白さで引っ張っていくみたいなところがあるじゃないですか。ビートの変化が面白かったり、選ばれているシンセの音であったり。既存のものに、見せ方、エディットの仕方で楽しく新しい質感を出していって、その作り方を隠すでもなくそのまま出している。ムードボードとかPinterestを見ているときの感覚がそのまま作品に落とし込まれたみたいに。
泡沫:まさにそれ。
セメント:そこがすごく面白くて。いまのアルファ世代とかデジタル世代の、好きなものをどんどんピンで刺していって、ブクマしていって、どんどん自分の中に取り込んでいくみたいな、そういう感覚がそのまま落とし込まれているなと思います。
セメント:EPのタイトルにある「delulu」というのは、K-POP界隈で流行っているスラングで、delusional(=妄想的な)をそういうふうにふざけて言ってるんですけど、「あなた、そんな実現するでもないdeluluを考えてるんじゃないよ」のように使われる言葉なんですね。でも同時に、そういうふうに自分を騙して騙してやっていくことで成功するんだ、という意味で、ポジティブなところで使われることもあるんです。
泡沫:日本語で言ったら虚妄、ポジティブな虚妄みたいなことですかね。
セメント:「delulu is solulu」っていう言葉があって、「虚妄の中に浸るのが解決策なのだ(delusion is solution)」という意味なんですけど、「思い込んでいれば実現するんだ」ということですよね。とにかくやっていかないとだめよ、みたいな。それをタイトルに付けているのも、「私たちはスターになれると思っています」という決意表明ですよね。そういうところも含めて、とにかく細部の面白さで引っ張っていく、そこで使われているものは全て既存のもの、というのが面白かったです。いまの世代の感覚が生でぎゅっと感じられるような、そういうEPになっていたなと思います。