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【2025年下半期振り返り・音楽編③】中国、トランプ、Ye……「音楽と政治」を巡って

2025.12.26

#MUSIC

政治と音楽、深刻な関係の変化

風間:アメリカだと、バッド・バニーが、アメリカ国内でライブを簡単にできない、というような話をしていましたね。いま、ラティーナの人たちがアメリカで(トランプ政権の移民政策により)取り締られてしまっている。(プエルトリカンの)バッド・バニーがライブをすることになれば、アメリカ中や中南米からいろいろな人が来ることになるけれど、そこにICE(移民税関捜査局)が目をつけるかもしれないから、そういう危険には晒せない、という。

キムラ:バッド・バニーが2月の『スーパーボール』(のハーフタイムショー)で何をするかっていうのが、まず注目ですよね。あれで2026年のポップカルチャーが始まると思いますね。

松島:ここ何年かは特に、大きな流れに巻き込まれることによって、つながっていた人たちやシーンの中に軋轢や分断が生じることがいろいろ起きていて、1回1回心に来ますよね。正直あまり言及もしたくないですけど、今年は『Boiler Room Tokyo』絡みの話(※)もあったわけですし……。

※『Boiler Room』の運営企業が投資会社KKRの傘下となり、KKRの投資先に軍需関係やイスラエル関係企業が含まれることから、「『Boiler Room』はイスラエルのジェノサイドに加担している」と批判を受けている。東京開催においても、DJに出演しないよう呼びかける動きや、出演を取りやめたDJと出演したDJの間に摩擦が生じるなど、論争の的となっている。

風間:そうですよね。先日サブリナ・カーペンターが、ホワイトハウスがSNSに投稿した動画に自分の曲が使われたのを、やめろとリプライしたのが、すごく話題になっていたんです。

松島:要は「自分の作品をプロパガンダに使うな」って話ですよね。

風間:そうですね。勝手に、しかもその曲の中の一節を、悪意のある文脈で象徴的に使う感じになっていて、これはまた一段別のフェーズに入ってきたなという感じがしました。高市早苗の動きを見ていると、トランプがロールモデルになってしまっているようなところを感じるので、日本でもこれから、ポップカルチャーの誤読を超えた意図的な悪用が来るかもしれない、という悲観的な予測もあります。

キムラ:ポップミュージックにおける皮肉やユーモアみたいなものが、通用しなくなってきてるようなところもありますよね。とはいえ、じゃあ生活実感に基づいたスローガンとか運動みたいなものを前景化させただけのものが「ポップ」なのか? って言われたら、そうではないので、そこのバランスが難しい。

風間:その意味でも(ポップスター的な役割から)「降りる」人が多いのかなと思ったんですよね。危機感というか、危険水域が上がってきているので、一回自分たちのホームに帰ろう、というような。それで実際救われる人もいると思うで、僕はそれはけっこう良いことだとも思っています。政治とポップカルチャーの幸福な季節はもう完全に終わったというのは、今年のリリースを見ていても思いましたね。

松島:そして政治の季節が来て。

キムラ:はい。そこでどう文化をやるのか。それはとてつもなく困難なことだと思います。

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