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中国公演中止問題に思うこと
—その羊文学をはじめ、海外で活躍していく日本のアーティストもたくさんいる中で、日本のアーティストの中国公演が軒並み中止になった件も、最近話題になりました。
松島:はい。もう、すごく由々しき問題ですよ。(ロックバンドの)雪国とか、僕の近い人たちの間だけでも仕事が飛んじゃった人が何人もいるくらいだし。ここ何年か、東アジアのインディ音楽シーンは良い感じに親交が生まれていてきたところだったので、非常に残念だしもったいない。日本の若いインディペンデントなアーティストが中国に行くと、日本での活動キャパシティより大きなステージでパフォーマンスできちゃうという点にもドリームがありましたし。
風間:青い薔薇という大阪のロックデュオがいて、日本では知名度も動員もそこまでではないんですけど、中国で人気がすごくて。今年取材をしたんですけど、中国に呼ばれてツアーをして、行ってみたらお客さんが何百人もいたと話していました。そのままの状況が続いていたら、逆輸入じゃないですけど、日本でも火がつく感じだったと思うんですよね。
風間:bilibili動画で、日本のシューゲイザーとかドリームポップとかを紹介する人がいるんです。「先生」と呼ばれているインフルエンサーは、ポストロックとか残響系をすごくカバーしていて、1つのバンドを40分ぐらいかけて解説してるんですね。すごい熱量で。青い薔薇はその人に紹介されたことで広く知られたみたいです。
松島:すごい! 橋渡し役ですね。
風間:そうなんです。きちんと文脈を含めて紹介するのを、向こうの人がやってくれている。言ってしまうと、日本のインディロックがちょっとサボっていた部分を、やってくれている方がいるという状況なんですよね。
松島:そういう草の根的な一番尊い営みも、握りつぶされてしまった形になったわけですから、本当にしんどいニュースですよね。
キムラ:これからの日中関係しだいでは 、アメリカがそうだったように、TikTokとかもどうなっていくかわからないし、仮にTikTokが禁止になったら、カルチャー自体がどんどん変容していくわけだし。政治が文化の舵取りをより強く握っている状況になったなという感じはしています。