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温泉のようなコミュニティを育てる
ー意識の格差が広がっているのは、とても重要な問題ですよね。犬山さんの本などを読んで自分が感じる辛さが何なのかわかっても、周りとは共有できない状況なのであれば、さらに辛さが増すような気もします。
犬山:それこそ相談もできないですもんね。でも、構造を知っておいた方がいいと思うんです。原因がわからない不安や恐れを抱いていると、それこそ陰謀論とかにハマってしまう可能性もあるんじゃないかと。悩みを持つことは誰しもあって、それ自体は悪いことじゃないですけど、悩みを抱えて孤立することと、悩んでいる自分を責めてしまうことは怖いと思います。この悩みは社会の構造に起因するんだなとわかれば、自分を責めることはなくなりますよね。「真っ当なモヤモヤ」として心の中でラベリングできるようになる。そうなると、友人ともシェアしやすくなると思うんです。
ただ、友達ってそういう話をできる関係ばかりじゃないですよね。趣味だけで繋がっていることも多いし。お互いのことをちゃんと尊重できるかどうかを見極めることが大切ですよね。意を決して打ち明けた時に「それはあんたも悪いんじゃない?」みたいに喧嘩両成敗で片付けられたら、もっと辛くなっちゃうので。

ーセクハラに対して「短いスカートを履いてた方も悪い」と言うような。
犬山:そうそうそう。そういうリアクションはないだろうという信頼関係は大事ですよね。私は「温泉友達」って呼んでるんです。一緒にいると温泉に浸かっているような感覚になれる友達。もちろん他人同士なので、100%理解しているかはわからないんですが、自分一人のアクションではどうにもできないような痛みをその友達と共有することで孤独にならないし、自分を責めることもなくなるので。
ー温泉友達のコミュニティを持っていない人でも、信頼できそうな友達の悩みを「大変だったね」と聞くようにするとか、自分から働きかけることでちょっとずつ温泉状態を育てていくこともできそうですね。
犬山:私は温泉に入れてもらった側なんです。本心から相手に「大好きだよ」と言える友達がいて、その子に引っ張られてみんなも「好き」って言い合えるようになって。言葉にしているから、お互いに確固たるリスペクトと愛があることに疑いがないんですよ。そうなると、安全基地になるから、弱い部分をさらけ出しても自分が不当に責められることがないと安心できる。その友人にはずっと感謝してるんですけど、そういう関係性は自分からでも作れると思うんですよね。条件付きではない愛情を相手に手渡すという意味で子育てにも近いと思います。それが温泉関係を作っていくんですよね。
ー男性同士のコミュニティだと、言葉で愛情を示すのに抵抗がある人も多そうです。
犬山:「愛してる」は難しくても「リスペクトしてる」は言えるんじゃないですか? 何か相手がやったことに対して「それいいね」とまめにリアクションするコミュニティは作れると思うんですよね。

ー確かに。最近、些細なことでも「あー、楽しいなあ」と口に出してるおじさんがいると場が朗らかになることに気づいて、実践するようにしてます。
犬山:素敵ですね(笑)。おじさんって本人に自覚がなくても権力を持ってしまうものだからこそ、ご機嫌なおじさんはいいですよね。私もご機嫌なおばさんになりたいです。