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『1975年のケルン・コンサート』解説 キース・ジャレット名盤の舞台裏を描く映画

2026.4.8

#MOVIE

映画の「即興演奏的」な構造とプロット

話法的にも、通常の伝記映画とはかなり異なっている。ブランデスを主人公としたドラマをメインに、途中、キース・ジャレットとマンフレート・アイヒャーを軸とする長い物語が差し込まれている上、ときおり架空のジャズジャーナリスト=マイケル・ワッツによるドキュメンタリー風の解説が入る作りとなっているのだ。プロダクションノートによれば、このような構造を採用した背景には、映画の話法自体を定型的なものから離れて即興的かつ当意即妙的にすること、つまり、映画のモチーフであるジャズ、そしてジャレットの即興演奏のありようと重ね合わせるという意図があったようだ。

右からヴェラ・ブランデス(マラ・エムデ)、マンフレート・アイヒャー(アレクサンダー・シェアー)、キース・ジャレット(ジョン・マガロ) / © Wolfgang Ennenbach / One Two Films

こう書くと、映画史に詳しい方であればジョン・カサヴェテスの初期作『アメリカの影』などの方法論を想起するかもしれない。たしかに、手持ちカメラを多用したクライマックス近くのスピーディーな撮影や、音楽の響きとインタープレイ的に連動していくカットの運動性など、「ジャズ的」と表現しても差し支えなさそうな技法が駆使されてはいる。だが、定石通り事前に脚本を練り込んで制作に臨んだという本作が目指したであろうところは、即興的要素を出発点としてそれを再構築していくカサヴェテスのような方法論とは当然異なっている。映画全体を貫くボルテージがクライマックスへと至る中でどんどんと上昇していく感じや、大トラブルに対してその場ごとの必死の解決策で応じていくプロット自体が、どこか「即興演奏的」に感じられる、といった方が実際の印象に近しい。

こうした「即興性」のアナロジーは、上のような技術的な次元よりも、むしろ本作が描こうとしているテーマとの重なり合いという視点から読み解いてみるべきかもしれない。そのような分析を展開するには、ひとまず当時のブランデスを取り囲んでいた社会情勢と、1970年代前半に至るまでの歴史的な背景を考えてみるのがいいだろう。

© Wolfgang Ennenbach / One Two Films
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