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『1975年のケルン・コンサート』解説 キース・ジャレット名盤の舞台裏を描く映画

2026.4.8

#MOVIE

主人公は若干18歳のプロモーター

そのケルン歌劇場公演から50年の月日を経て制作された映画『1975年のケルン・コンサート』は、まさにそうした「神話」の裏側を描き出そうとする、大変野心的な作品だといえる。あらすじを紹介しよう。

高校生のヴェラ(マラ・エムデ)は、いつものように友人とともにジャズクラブを訪れたある晩、イギリスのベテランサックス奏者ロニー・スコットと出会う。大胆にも彼はヴェラに、自身のヨーロッパツアーのブッキングを依頼する。厳格な父の監視をかわしながら一人ブッキングの仕事を始めたヴェラは、持ち前の度胸と行動力で、見る見るうちに地元ジャズシーンの中で名を上げていく。

そんなある日、『ベルリン・ジャズ・フェスティバル』でのキース・ジャレット(ジョン・マガロ)のソロ演奏を目の当たりにした彼女は、美しくも力強いその演奏に強い感銘を受け、地元ケルンで彼のソロ公演を企画しようと奮起する。会場は、それまでジャズの公演が行われたことのない権威あるホール=ケルン歌劇場だ。母からの援助でなんとか開催資金を手にした彼女は、自らの将来を賭けた背水の陣で当日の公演に挑むが、そこには思いもかけないトラブルが待ち受けていた――。

このあらすじから分かるように、第一にこの映画は、同コンサートが実のところ若干18歳の女性プロモーター=ヴェラ・ブランデスの手による興行だったという驚くべき事実を元にしている(私自身、不勉強ながらそうした事実を初めて本作で知った)。したがって、実在のミュージシャンを題材とした通常の伝記映画とは物語の視点からしてまったく異なっているわけだが、まさにその視点の取り方にこそ本作の最大の魅力があると感じる。つまり本作は、キース・ジャレットの伝説的ケルン歌劇場公演を最大のクライマックスとする一人の女性のビルドゥングスロマン(※)となっているのだ。

※ビルドゥングスロマン:主人公の内面の成長を描く物語の1ジャンル。成長譚

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