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『センチメンタル・バリュー』が描く「家」「居場所」「夢を見ること」とその音楽

2026.2.18

#MOVIE

夢を見ること、踊り続けること

本作『センチメンタル・バリュー』では、この“Dancing Girl”が2度流れる。1度目は、映画の冒頭、緑に包まれた街の景色のパンニングに続いて、かつて家族が共に暮らした家の現在の姿が写し出される部分だ。ほのかにミステリアスな雰囲気を醸しながら、これから始まる物語への静かな期待を抱かせるような、大変に美しいオープニングだ。

同曲のオリジナル音源は、組曲的な構成をもつ9分超えの大作だが、ここではその冒頭部が抜粋の上使用されている。歌詞を引用しよう。

昨夜夢を見た
流れ星のように煌めく
光の源は
とても近くに見えた
それでもまだ遠くにある

飛んでいると思った
惑星のいる場所へ向けて
昼と夜の間を
ここにいるのは私
あそこには君

踊るあの娘を追え
静かな場所へゆけ
この疲れた世界の
時と空間の間で
我々は自由になる

――テリー・キャリアー“Dancing Girl”(筆者訳)

トリアー監督自身が、本作のプロダクションノートで「⾮常に感情的なインスピレーションを与えてくれました」と語っている通り、この曲“Dancing Girl”は、映画のテーマと深い部分で響き合っていると感じさせる。

この曲で歌われる「夢を見」ること、離れたところを彷徨う「私」と「君」の対峙、そして、「踊る」=演じる娘を追って「この疲れた世界の / 時と空間の間で / 我々は自由になる」というモチーフは、まさに、映画の中で描かれるグスタヴとノーラの姿とそのまま重なっている。芸術に身を奉じ、美と真理を追い求めるグスタヴとノーラは、言ってみれば、「夢を見」続ける人々だ。父と娘の間に、簡単に心が通じ合うことはなくとも、芸術的な自由と自らの居場所を求めつづけてきたことでは共通している。グスタヴにとってノーラは、いまだ「踊り」続けている娘であり、彼は、その踊り続ける娘の後を追って、居場所へと再び辿り着こうとするのだ。

次女アグネス(インガ・イブスドッテル・リレオース / 左)と、スター女優レイチェル・ケンプ(エル・ファニング / 右) / © 2025 MER FILM / EYE EYE PICTURES / LUMEN / MK PRODUCTIONS / ZENTROPA ENTERTAINMENTS5 APS / ZENTROPA SWEDEN AB / KOMPLIZEN FILM / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ARTE FRANCE CINÉMA / FILM I VÄST / OSLO FILM FUND / MEDIEFONDET ZEFYR / ZDF / ARTE
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