メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES
その選曲が、映画をつくる

『メドゥーサ デラックス』変死体をめぐるミステリーとディスコの意外な交歓

2023.10.11

#MOVIE

© UME15 Limited, The British Film Institute and British Broadcasting Corporation 2021
© UME15 Limited, The British Film Institute and British Broadcasting Corporation 2021

本作にディスコミュージックが使用される「必然性」

ここまで書いてくれば既にお分かりのように、本作『メドゥーサ デラックス』は、ダンスミュージック、とくにディスコに多大な影響を受け、同時に並々ならぬオマージュを捧げている作品である。

一聴すると控えめなKorelessのスコアの端々にもディスコ / ハウス的な要素が滲んでいるし、既存曲の選曲はド直球でディスコ路線だ。これにはもちろんハーディマン監督の嗜好が大きく関係しているようだが、一方で、ただ「好きだから使った」という以上の必然性を感じさせてくれるのも重要なポイントだろう。

一つには、映画自体のリズムや構造に見られるディスコ性を挙げられる。先の「時間移動」のパートにも現れていた通り、ある意味で、本作の映像の流れ自体が、ディスコミックス的なシームレス感覚を伴っていたのだった。次々と画変わりしていくワンカット撮影による流れるような感覚は、様々な楽曲を巧みにリアルタイムミックスしていくディスコDJの手法とのアナロジーを強く感じさせるし、ここぞという局面で駆使される(観客にそうとは明示しない)カットの繋ぎの巧みな編集に触れると、まさしく、DJ的な意味での「見事なミックス」が効いている、と評したくなってしまうのだった。ムードの持続、融合、刷新。散見される映像技法それ自体が、すぐれてダンスミュージック的であり、ディスコミュージック的なのだ。

© UME15 Limited, The British Film Institute and British Broadcasting Corporation 2021

もう一つ、文化的な側面におけるディスコ〜ハウスカルチャーとの関連も指摘できる。それは主に、ゲイ、クイアカルチャーとの繋がりだ。黎明期の時点から、アンダーグラウンドのディスコ文化とゲイカルチャー / マイノリティ文化は互いに不可分のものとして発展してきたし、特に本作の舞台であるイギリスにおいては、大衆を巻き込むサブカルチャーとしてのダンスミュージック文化とも大規模な合流をみせてきた。そう考えれば、本作『メドゥーサ デラックス』の登場人物たちが、ゲイや有色人種、女性といったマイノリティや労働者階級の人々に占められているという事実にも、本作が、多様なアイデンティティを持つ人々が活躍する現代のヘアメイク / ファッション業界を舞台にしているから、という以上のものを読み取るべきだろう。

© UME15 Limited, The British Film Institute and British Broadcasting Corporation 2021
記事一覧へ戻る

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS