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「分解しきれないもの」や「情景」を描きたい
オカヤ:Xに流れてくる、下世話な嫁姑問題のエッセイ漫画とか、わりと読んじゃうんですけど、「早く復讐してください」っていうリプライがついてたりしますね。表現を楽しむというよりは、気持ちをすっきりさせる装置として読んでるのかも。
カラスヤ:「こういう方法がありますよ」って法律の知識をコメントしてきたりね(笑)。Xの漫画って、最終的に首吊ってないと納得してもらえない、みたいなところがあるじゃないですか。おばけとかも、ばーん、と出てくることが求められるというか。
オカヤ:驚かさないといけないから。
カラスヤ:これは別に他者批判ではないんですけど、自分の描写の仕方として、自分ではちょっと変だなと思うことをしないとウケないのかな……困ったな、というようなことを考えたりはしますね。
オカヤ:私、杉浦日向子の『百物語』とか、放っておかれるオチの短編がすごい好きなんですよ。
カラスヤ:ああ、僕も杉浦日向子さんすごく好きです。というか、僕の描くホラーを読んでくれたら影響がバレバレだと思いますけど……。オカヤさんが好きなもので、好きなものが多い気がする。杉浦日向子さんも好きだし、近藤ようこさんも好きですよね?
オカヤ:好きです。憧れています。
カラスヤ:僕も憧れてました。すごい切り取り方をするじゃないですか。顔の表情とか。ああいう切り取り方が、今の漫画ではやりにくくなってるんでしょうかね。
オカヤ:最後のコマの表情にたどり着くまで読んでもらえるか、表情だけで読み取ってもらえるかどうか。読者を信用すればいいんですけど、Xとかを見ていると、無理かもしれない、という気もしちゃって、よくない。

カラスヤ:分解しきれないものってあるじゃないですか。僕はそれを描くために描いてる、と言ったら言いすぎかもしれないですけど……ズバッと解決する表現が多くなっちゃいましたよね。
オカヤ:作者が言いたいことの正解を探すような「考察」が主流になってますよね。勝手に考えてよ、と思いますけど……。でも、単に自分がただ下手で伝えられてないっていう可能性もあるからなあ。伝わるか怖くて、ちょっと説明的にしちゃったりもします。
カラスヤ:僕は、エッセイ漫画のときは、もういいやろというくらいに説明しますね。反対に、ストーリー漫画のときは、極力文字を減らします。オカヤさんも文字数を使い分けたりはしますか?
オカヤ:たしかにストーリー漫画のときは、あったこと、その場所でその人がしゃべってることしか描かないですね。情景描写をしたいですもんね。