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私生活を切り売りして喜ばれるのは良くない
カラスヤ:たしかに。だから、生身で人前に出るととたんに振る舞い方がわからなくなったりします。エッセイ漫画を描いてると、漫画にでてくる作者と本人はやっぱり同一視されがちですけど。
オカヤ:「ああいう人だと思いました」みたいなことを言われますよね。
カラスヤ:よく言われますね。以前は、あのまんまと思われるのがちょっと嫌だったのか、漫画のキャラと離れようとしていた部分があったんです。
オカヤ:「ニコニコしてる丸いやつ」みたいな。
カラスヤ:そうそう。寄せていくんやったら、黄色いトレーナーとか着ればいいんですけど、そうじゃない格好をして、人前に出るときはシャキッとしておこうと思ってました。だんだん気がゆるんで、漫画に近くなってきましたけど。
オカヤ:結婚されるくらいまでは、わりとプライベートなことも描かれてましたよね。でも、そんなに日常生活をぜんぶ曝け出すわけでもない、その線引きが上手いなと思って読んでます。
カラスヤ:ありがとうございます。そうですね、私生活の切り売りに関しては「しているようで、しない」を心がけはいます。「そんなところまで描いちゃうんだ」だけで喜ばれるのは、ちょっと良くないような気がして。素材だけで「すごい、すごい」と言われたってしゃあなくて、やっぱり描き方・見せ方だと思うんです。
オカヤ:そうですね。私はそもそも自分のなかに、その事柄をそのまま描くだけで面白くなるようなセンセーショナルなことがないです……。
カラスヤ:ええ、20年もやっていれば、新しいことってそんなにないですよね。それに、自己開示的な、暴露的なところに踏み込むと、それをずっとやらなきゃいけなくなって、最後は破滅していくしかなくなっていくと思うんです。
オカヤ:「自殺ショー」みたいになっちゃいますよね。
カラスヤ:そう、一歩間違えばね。
オカヤ:でも、そういう漫画が注目を惹きやすいですよね。SNS上だと、愚痴の漫画が共感を集めて流行るようなことも多いですし。
カラスヤ:はい。編集の文句とか描くと、一定数の人が集まってきますよね。あれが怖くてね。
