漫画家オカヤイヅミさんが、ゲストを自宅に招いて飲み語らう連載「うちで飲みませんか?」。第10回は漫画家のカラスヤサトシさんにお越しいただきました。
自画像のキャラクターが進行役として登場する、気さくなエッセイ漫画を、長く描いてきたお二人。おだやかな会話の中にその創作論や矜持がのぞく、サシ飲みの模様をお届けします。
当日振る舞われた「チリコンカン」のレシピもお見逃しなく!(レシピは記事の最後にあります)
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レポート漫画の仕事術
カラスヤ:今日はありがとうございます。歩いてでも来れる距離でした。こんなにご近所だったんですね。
オカヤ:お近くだとは聞いてましたけど、そんなに近かったんですね! カラスヤさんは多作でお忙しそうですよね。いつも気がつくと新刊が出ているイメージです。
カラスヤ:オカヤさんもけっこうあちこちで描かれてますよね。同じタイプな印象です。
オカヤ:節操がないというか、やれる仕事はぜんぶやるタイプです。自転車操業感が強いですが……。
カラスヤ:一緒です。声をかけられたら「やります!」って。

漫画家。1973年生まれ。著作に『カラスヤサトシ』シリーズ(講談社)、『びっくりカレー』シリーズ(新書館)、『アレルギー戦記』(ぶんか社)、『おのぼり物語』(竹書房)、ホラー作品集『いんへるの』(講談社)『おとろし』(秋田書店)など。
オカヤ:カラスヤさんの漫画は、本人が登場することが多いじゃないですか。最初の本はタイトルから『カラスヤサトシ』だし。ああいうエッセイ漫画の仕事をたくさん抱えていると、日常がぜんぶ「これは漫画のネタになるな」みたいになっちゃいませんか?
カラスヤ:何をしてても「これは4コマにできないかな」と考えていると、あまり正常な生活ではなくなってきますよね。昔はそういうこともありました。最近は取材して描くレポート漫画仕事の方が多いので、そうでもないですね。
オカヤ:レポート漫画の中のカラスヤさんはいつも、新鮮に驚くという、キャラクターとしての役割を引き受けていますよね。
カラスヤ:いやいや、実際に絵のようにびっくりしたりはしていないですけど、「面白いな」とか「美味しいです」とは思ってますよ。
オカヤ:無垢な気持ちを保つのも難しいじゃないですか。
カラスヤ:基本、相手の言われたことは、鵜呑みにする方針で行くんです。ときどき、取材相手がおかしなことを言ってるんじゃないか、ということもあるんですけどね。それでも相手の意思や意見を、一回ぜんぶ飲み込んでみるというのは、心がけてはいるかもしれません。
オカヤ:それですごく読みやすいんですね。
カラスヤ:「あれっ?」と思っても、「そうなんですか!」と言うしかないときもあって。例えば、UFOを呼んでいる方の取材をしたりということもしていたので……。その場では1ミリも疑わないように話を聞きますね。
オカヤ:たしかに「いやいや、またまた〜」と言っちゃったら、うまく話が聞けなそうですしね。私はそんなにいいリアクションを取れる自信はないですけど、レポート漫画を描くときの「サービス」の仕方というのは、たしかにあります。自分が狂言回しとして、驚いてみせるような。
カラスヤ:そうですね。
オカヤ:自画像は、実際の私とは見た目もけっこう違うんですけど、だから「こういうことがあった、こういうことを思った」というのを、生のままの気持ちよりワンクッション置いた感じで出せるところはあります。「私じゃなくてこのキャラが言ってる」というか。
