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NEWS EVENT SPECIAL SERIES
maya ongakuの米国西域記

いきなり空港でトラブル発生。フィリピン経由でシアトルへ

2025.4.16

#MUSIC

4月6日(日)

空港へ向かうため、僕らは朝の江ノ島に集まった。少しすると、つめたい雨が降り始めた。

旅客機に預ける荷物の重量制限に合わせ、重さを測りながら、内容物のコンビネーションを吟味する。さらに、2つの荷物をビニールテープで硬く巻き合わせ、1つの荷物にする。個数節約のための欠かせない作業だ。

ビニールテープで合わせた2つの荷物

空港までは、旧知の仲である染め職人の服部が送ってくれた。本当にいつもありがとう。

彼は昔、僕らのバンドでドラムを叩いていたのだ。

出発3時間前に空港へ到着すると、僕らが乗るフィリピン航空のチェックイン窓口に長蛇の列。結局2時間ほど待つことになり、搭乗時間までほとんど時間がない。

窓口でチェックインを行う。重量計に預け荷物を1つずつ乗せていくと、問題が起こった。フィリピン航空はビニールテープで合わせた荷物を1つの荷物として受け取ってくれないらしい。どうにか3人で頼み込み、空港のラッピングサービスを利用すれば大丈夫、というところまでなんとか漕ぎつけた。ラッピングサービス窓口まで荷物を持って走る。

3000円を支払い無事ラッピングを終えた荷物をもって、もう一度チェックインカウンターへと走る。荷物を預け終わると、またもや問題が起こった。池田と高野が機内に持ち込む予定であった手荷物があまりにも大きすぎるということで、その2つの荷物も強制的に預け荷物としてカウントされることになったのだ。

あまりにもデカすぎる手荷物。流石に無理がある

こうして、アメリカツアーでの全支出370万円にさらに4万の無駄な支出が重なり、全回収への道がまた一歩遠ざかったのだった。

飛行機に乗ると4時間ほどでフィリピンに到着した。フィリピン経由シアトル行きの旅程であった。フィリピンは30度を超える常夏で、湿った空気で肌が少し濡れた。搭乗口の近くの売店で、肉まんのようなよくわからないものを食べながら、マリオテニスをして搭乗までの時間を潰す。

これがなかなか美味しかった。中にあるのは滷肉飯風の肉炒め

搭乗時間になり、飛行機へ乗り込む。フィリピンまでのフライトで乗った飛行機の倍以上はある大きな機体。座席もひと回り広く、長距離飛行のために席もかなり深くまで倒すことができた。これには助かった。

目と口にマスクを装着する僕と、ゲームを続ける2人

機体は飛行中、乱気流によってかなり揺れたが、その隙間をみて少しだけ眠ることができた。眠れない時間は機内サービスの映画『エイリアン・ロムルス』(Alien: Romulus)を見たり、本を読んだりして過ごした。11時間のフライトだったが、あっという間に感じた。

熟睡する2人。僕は基本的に、こういったイレギュラーなタイミングで眠れないタイプだから、羨ましい

シアトルは日本よりも寒く、雨が降っていた。空港の到着口まで、ツアーマネージャーのマイキーが迎えに来てくれた。マイキーは、鼻の下にランプシェードのような立派なひげとサラサラロングヘアをした、いかにもアメリカの1970年代ロックンロール野郎という見た目だった。イカしている。

ツアーマネージャーのマイキー。彼とはこれから20日間以上共にいることになる

マイキーがブッキングしてくれたホテルに到着すると、僕らはすぐに寝てしまった。日本を出発してから、20時間も経っていたから当たり前だろう。しかし、その夜はジェットラグでほとんど眠れなかった。シアトルの真夜中の騒音を聞きながら、ただ目を瞑って朝日を待った。

朝7時にホテルの朝食を食べ、マイキーと4人でシアトルの街を散歩した。ホテルの近くにあるパイクプレイスマーケットという大規模な公衆市場でフルーツを買い、チャイニーズスーパーマーケットで米を調達した。買い物の途中で『スタインブルック・ネイティブ・ギャラリー』というアートスペースを見つけた。北西海岸先住民、つまりネイティブカナディアンのフォークアートの展示と販売をしているギャラリーで、僕らは雨宿りがてら、立ち寄った。原始の精神を落とし込んだパターンと、生命のリアルを掘り出す彫刻が不気味なまでに美しい。

ネイティブカナディアンのアートたち

そのギャラリーには僕らのようなカツカツの若者が買えるようなものはほとんどなかったが、レジ横のお皿に「スピリットストーン」と書かれたカラフルな石が積まれており、ひとつずつにそれぞれ別の動物が描かれていた。なんとなく、カエルが描かれたグリーンの石を手に取って、その裏を見ると「PEACE」の文字。値段は5ドル。

僕はこの石を、このツアーのお守りにすることにした。

スピリットストーン

店を出ると、雨はさらに強まった。アメリカはいつも晴れてるものだと勝手に思っていたので、雨具の用意はなく、僕らはホテルまで濡れて帰るしかなかった。

濡れた服を乾かしながら、部屋でダラダラと過ごしていると、僕らの日本のマネージャーである北澤学氏(以下キタさん)から、シアトルに着いたと連絡があった。キタさんが主宰しmaya ongakuが所属するBayon Productionは、日本とアジアでの活動をマネジメントする事務所であり、僕らの海外のツアーはキタさんのテリトリー外のはずなのだが、自腹を切って数日サポートに来てくれたのだ。前回のEU / UKツアーの時も、僕らのロンドン公演を見るためだけにイギリスへ来てくれた。感謝してもしきれない。

キタさんがディナーに行きたいというので、マイキー含め5人でホテル向かいのピザ屋に入ることにした。アメリカに来て初めての晩餐であった。

ホテル向かいのピザ屋にて。このピザがスモールサイズであり、ラージサイズは18インチもある。45cm強。アメリカのデカさを認識する

この夜は前日よりも少しだけ眠れた気がする。

明日からとうとうツアーが始まる。

初日はKEXPというシアトルにある非営利ラジオ局にてライブ映像の収録と、シアトルの「Nemous」というベニューでのショーがある。

不安と高揚で心臓の音がうるさかった。

※次回へ続く

連載もくじはこちらから

maya ongaku US TOUR dates 2025

Apr 08 Seattle, WA, US|Neumos
Apr 09 Bellingham, WA, US|The Shakedown
Apr 10 Victoria, BC, Canada|Wicket Hall
Apr 11 Vancouver, BC, Canada|The Pearl
Apr 12 Portland, OR, US|Wonder Ballroom
Apr 14 Chico, CA, US|Argus Bar + Patio
Apr 15 Oakland, CA, US|The New Parish
Apr 17 San Luis Obispo, CA, US|SLO Brew Rock
Apr 18 Jacumba Hot Springs CA, US|Jacumba Hot Springs Hotel
Apr 19 Los Angeles (LA), CA, US|Teragram Ballroom
Apr 20 Flagstaff, AZ, US|Coconino Center for the Arts
Apr 22 Santa Fe, NM, US|Tumbleroot Brewery & Distillery
Apr 23 Oklahoma City, OK, US|Resonant Head
Apr 24 Austin, TX, US|APF 25: Kickoff Party

maya ongaku(マヤ オンガク)

2021年、江ノ島の海辺の集落から生まれた園田努、高野諒大、池田抄英による3人組バンドmaya ongaku。魂のルーツを超えたアーシーなサイケデリアを奏でる地元ミュージシャンの有象無象の集合体。その名の由来は、古代文明からではなく、視野の外にある想像上の景色を意味する新造語。「自然発生」と表現する、非生物から生物が生まれるとされる現象の集大成が<maya ongaku>の原点である。2023年5月に1st album『Approach to Anima』をGuruguru BrainとBayon Productionよりリリースし11月にEU/UK TOUR、12月に国内TOURを行い成功をおさめる。2024年8月にNew EP『Electronic Phantoms』を発表。8月にWWWとの共同企画 “rhythm echo noise”ではオランダからFelbmを招聘し開催。TOKYOから世界へ発信する新たな音楽アワード「TOKYO ALTER MUSIC AWARD 2024」の”Best Breakthrough Artists”を受賞する。これまで森道市場、FFKT、FUJI ROCK、朝霧JAM、FUJI&SUNなど多くの国内フェス、また韓国や中国のASIAフェスにも出演。

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