本年度ゴールデングローブ賞2部門ノミネート(主演男優賞、助演女優賞)、第82回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)受賞の話題作『スマッシング・マシーン』が、5月15日(金)より全国公開される。
本作は、MMA(総合格闘技)のメジャーリーグともいえるUFCの元ヘビー級チャンピオンであり、大ブームを巻き起こした日本MMAの祭典『PRIDE』でも活躍した伝説の格闘家マーク・ケアーの激しすぎる人生の軌跡を描いた伝記映画だ。
主人公ケアーを演じるのは、「ザ・ロック」の名でWWEのトップレスラーとして活躍し、現在は超肉体派スター俳優となったドウェイン・ジョンソン。実在の格闘家を演じるにあたり、ここまでハマる配役はなかなかない。筋肉のみを過剰に搭載した俳優なら、見てくれをケアーに寄せることはできるだろう。だが全盛期のケアーの動きを真似ることは、容易ではない。その、地を這うように低い高速タックルも、相手の頭蓋を叩き壊さんばかりのパウンドも、一朝一夕で真似できるものではない。
その点、かつてはNFL入りを目指したフットボーラーであり、プロレスラーとしても一時代を築き、俳優転向後も「世界で最も稼いだ俳優」とまで言われるようになったドウェイン・ジョンソンほど、この役にふさわしい存在はいない。
アメリカンフットボールもプロレスも、高密度の筋肉を搭載した肉体を、長時間ハードに動かし続けるスポーツだ。MMAへの互換性も高い。事実、トレーラー映像で観られる試合シーンでは、全盛期のマーク・ケアーが復活したかのような錯覚を覚える。ドウェインの再現度は、120点満点と言える。

問題は、マーク・ケアーの人生を忠実に再現したならば、この物語は単純なサクセスストーリーではないということだ。
リング上で野獣のように暴れ回っていたケアーは、実は人一倍繊細で臆病な精神の持ち主だった。戦いへの恐怖に抗えなかった彼は、禁止薬物に手を伸ばす。ドーピングによる過剰な筋肉増強。その凶暴性も打たれ強さも鎮痛剤の中毒的な過剰摂取によるものであり、それらの薬物たちは、確実にケアーの体を蝕んでいった。
薬物の過剰摂取による心臓の一時停止を経て、格闘家としての活動を停止。リハビリを経て約3年ぶりにPRIDEのリングに帰ってきた彼に、かつて「霊長類ヒト科最強の男」と呼ばれた姿は微塵も残っていなかった。薄くなった胸。細くなった腕。張りのない体に、締まりのない腹部。そしてなにより変わっていたのは、一切の闘志が感じられない、その目つきだった。
試合はあっという間に終わった。自らのタックルで倒れ込んだ際に頭を打っての失神KO負けという、残酷なほどに無残な敗戦だった。
サクセスストーリーからのこの墜落劇を、ドウェイン・ジョンソンがどのように演じるのか。そして、かつて「最強」と呼ばれた男の光と影を、本作はどのように描き切るのか。
『スマッシング・マシーン』
監督・脚本:ベニー・サフディ
出演:ドウェイン・ジョンソン、エミリー・ブラント、ライアン・ベイダー、バス・ルッテン、オレクサンドル・ウシク ほか
2025年|アメリカ|原題:The Smashing Machine|上映時間:123分|字幕翻訳:佐藤恵子|映倫:G
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2025 Real Hero Rights LLC
<ストーリー>
日本中を熱狂の渦に巻いた総合格闘技の祭典〈PRIDE〉の創成期にあたる1997年から2000年にかけて活躍した、伝説の格闘家マーク・ケアーの知られざる軌跡を描く〈実話〉。
当時日本で“霊長類ヒト科最強”と謳われるほど、恵まれた体型に相応しい華やかな戦歴を誇り、キャリア絶頂期にあったケアー。しかし、やがて訪れたはじめての“敗北”が彼の人生に暗い影を落とす――。