映画『しびれ』が、『第26回東京フィルメックス』のコンペティション部門に選出された。
『佐々木、イン、マイマイン』や『若き見知らぬ者たち』を手掛けてきた内山拓也監督の最新作である、『しびれ』。内山監督の故郷である新潟を舞台に、自分の居場所を探す孤独な少年が、大きな愛を知るまでの20年間を描いた、監督の自伝的作品となっている。
孤独な少年期をくぐり抜け、自分のもとを離れた父への静かな怒りと、女手一つで自分を育てた母に憎しみと愛を感じている主人公・大地を演じるのは、北村匠海。水商売で日銭を稼ぎ、世間的には育児放棄と呼ばれるような生活を送るものの、息子を愛している母・亜樹役を宮沢りえ、暴君のように振る舞っていたが、時が経ち悲哀に満ちた余生を送る大地の父・大原役を永瀬正敏が演じる。また少年期の大地役に、榎本司、加藤庵次、穐本陽月の3人がキャスティングされている。
また、写真家のトヤマタクロウによる劇中スチール4点も初解禁された。『第26回東京フィルメックス』は、11月21日(金)から30 日(日)まで、有楽町朝日ホールとヒューマントラストシネマ有楽町で開催される。
僕は一体誰を演じたのか、間違いなく誰かではあるのですが。
北村匠海 (大地役)
ただそれは感情という概念がそのまま形になったような、初めての芝居体験でした。
そして僕が抱えていたものは怒りそのものでした。
この映画で僕が決めていた事はただ一つで、監督に NO と言わない。
監督の見てきたもの、今信じているもの、過去の無くなったもの。
その全てを、北村匠海を介して表現して欲しいと心に決めていました。
この映画で一緒に心中してくれと監督は言ってくれたんです。すごく嬉しかった。
是非、楽しみにしていて欲しいです。
壮絶に、もがき、生きた亜樹という役を自分の身体に引き摺り込むのはとてつもなく苦しかったけれど、、内山監督はじめ、現場にいる皆んながこの作品に対して愛があって真剣で、その熱量に、私自身、演技の枠を超えてしまうような瞬間があって、それが怖くもあり、面白さでもありました。
宮沢りえ(大地の母・亜樹役)
この作品に出会えて良かったと思っています。
数日の参加でしたが、全身に”闇”と”負”と”後悔”を纏い続けました。
永瀬正敏(大地の父・大原役)
観ていただく方々の“アンチテーゼになれれば”との思いで、監督の願いと揺れをどう具現化するか?
その事だけを考えていた日々でした。
この作品を創る事、上映する事によって
監督の心の中の葛藤が、物語の時間軸と共に浄化され未来へ動き出します様に。
東京フィルメックスで上映していただけるとの事、感謝しています。
小さな世界の大きな物語です。
内山拓也(監督・原案・脚本)
少年の眼差しは、何を捉えているのか。
映像と生活音、自然の音が重なり合う。
ゆれる感情と共に、海、風、雨、雪。冬の新潟をフィルムに焼き付けました。
過ぎ去っていく日常の中で、息をすること、心の切なさ、恐ろしさ、時にある喜び、それらの空気を肌で感じること。
この映画を通して、見落としがちな日々の美しい断片に気づいたり、生活や人との関わりが愛おしく感じてもらえたらと願いました。
「しびれ」は私にとって人生をやり直すための確かな基盤となったように、
人生は何度でもやり直せ、手遅れなことはない、
再び人生を歩み出そうとするすべての人々に、
それでも前を向きたいと思うすべての人々に、
そして存在のない子供たちに、この映画を捧げます。
内山拓也の描く物語の主人公は、いつでも多くを語らない男だった。
神谷直希(東京フィルメックス プログラム・ディレクター)
比較的会話劇に近いかもしれない『佐々木、イン、マイマイン』の主人公でさえ、どちらかというと寡黙な男として設定されていた。
そして本作『しびれ』に至って、内山は主人公からほぼすべての言葉を奪ってしまった。
しかし、彼の作品で最も印象に残る主人公を問われたら、多くの観客が本作の主人公を挙げるのではないだろうか。
役者の顔と身体に、そして何よりも映像それ自体に多くを語らせること。
内山が何よりも「映画」を信じているからこそ、この領域に辿り着けたのだと、この作品を見て確信した。
『しびれ』
監督・原案・脚本:内⼭拓也
出演:北村匠海 宮沢りえ
榎本 司 加藤庵次 穐本陽⽉
⾚間⿇⾥⼦ / 永瀬正敏
企画・制作:カラーバード
製作幹事・制作プロダクション:RIKI
プロジェクト 配給:NAKACHIKA PICTURES