河瀨直美監督の最新作『たしかにあった幻』が2026年2月に全国公開される。また、第78回ロカルノ国際映画祭のインターナショナル・コンペティション部門にクロージング作品として正式招待が決まった。
同作の舞台は、小児臓器移植実施施設。フランスからやってきたレシピエント(=臓器提供を受ける人)移植コーディネーターのコリーが、脳死ドナーの家族や臓器提供を待つ少年少女とその家族と関わりながら命の尊さと向き合う物語。また、突然失踪した恋人の行方を追うコリーの姿を通じて、愛と喪失、希望が描かれる。
主人公を演じるのは、ポール・トーマス・アンダーソン監督『ファントム・スレッド』(2017年)への出演で知られるヴィッキー・クリープス。コリーの恋人であり、突然失踪する迅を寛一郎が演じる。
撮影期間は2024年6月から11月に及び、兵庫、大阪、奈良、岐阜、屋久島、パリとロケーションを転々としながら実施された。小児臓器移植に携わる実際の医療関係者たちが、現在の日本が抱える臓器移植の問題点をディスカッションするシーンや、移植手術シーンなどはドキュメントとして撮影されている。
同作はロカルノ国際映画祭で、現地時間8月15日(金)にワールドプレミアとして上映される。ロカルノ映画祭アーティスティックディレクター・Giona A.Nazzaroは「水のように、音を立てずに深く掘り下げ 沈黙を恐れず、耳を傾ける映画を作ってくれてありがとう」とコメントしている。
また、河瀨監督、ヴィッキー・クリープス、寛一郎からのコメントも届いている。
この度、映画を本当に愛してやまないロカルノ国際映画祭の選考委員の皆様に
監督・脚本:河瀨直美
本年度のコンペ部門のクロージングフィルムに選んでいただきましたことを大変光栄に思います。
思い返せば、2000年公開の「火垂」がロカルノで受賞したことは
私にとってとても美しい忘れられない想い出です。
25年の月日を経て、またロカルノに戻って来れたことに感謝しています。
When I make a movie, I follow an invisible thread – one woven into the larger tapestry of dreams. This particular thread led me deep into the ancient forests of Yakushima and back into the gentle heart of childhood. I walked the delicate line between ghosts and reality, drawn by the mystery of love.
ヴィッキー・クリープス
映画を作るとき、私は目に見えない一本の糸をたどります――夢という大きな織物に織り込まれていく糸です。
今回、糸は、私を屋久島の太古の森の奥深くへと導き、そして幼い頃のやさしい心へと連れ戻してくれました。
幽霊と現実のあいだの繊細な境界線を歩きながら、私は愛という謎に引き寄せられていきました。
諸行無常。
寛一郎
何かこの作品に込められたテーマのような気がしています。
この作品は自分にとって挑戦でした。
言語、さまざまな自然での撮影、新たな人との出会いで、沢山の学びと、この現場でしか体験できない経験をさせてもらいました。
そんな作品がこうしてロカルノ国際映画祭に招待していただいた事を光栄に思います。
関わった沢山の人たちの努力が報われる気がします。
そしてこの作品が世界の人に見て頂けることに喜びを感じています。
『たしかにあった幻』
2026年2月全国公開
[STORY]
国際⼈材交流事業の⼀環で⽇本へやってきたフランス⼈⼥性コリー(ヴィッキー・クリープス)は、臓器の移植を必要とする人と関わるレシピエント移植コーディネーターとして、⽇本で数少ない⼩児⼼臓移植実施施設の病院でサポートスタッフとして働き始める。
移植を待つ重症の⼩児を多く受け持つその病院では、限られた⼈員で必死に⽇々の業務をこなし、切実な状況にある患者やその家族と向き合っていた。コリーはそうした厳しい環境の中でも、患者家族をはじめ、従事する医師や看護師、コーディネーター、保育士や院内学級の先生らと触れ合ううちに、移植医療をめぐる⼈々の輪の暖かさを再認識していく。
しかし、そんな彼⼥の⼼を⽀えてくれていた屋久島で出逢った恋⼈・迅(寛一郎)が、ある⽇なんの前触れもなく同居していた家から消えてしまう…
[CREDIT]
ヴィッキー・クリープス 寛一郎
監督・脚本:河瀨直美
音楽:中野公揮
制作:CINÉFRANCE STUDIOS 組画
共同制作:カズモ
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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