国際芸術祭『東京ビエンナーレ2025』が2025年10月17日(金)〜 12月14日(日)に開催されることが決定し、参加アーティスト38組が発表された。
東京の地場に発する市民による国際芸術祭である同芸術祭。第3回となる今回は、対立が深まる世界情勢でも、誰かと並んで歩くという身体的な行為が街や文化への関心を芽生えさせ、対話の種となっていくということから「いっしょに散歩しませんか?」をテーマに設定。参加者がまち歩きを楽しみ、アート作品を味わい、まちの歴史が刻んだ足跡を追いながら東京の魅力を探究することを目指す。
会場として、創建400年を迎える寛永寺、エトワール海渡リビング館の2つの拠点展示のほか、6つのエリア(上野・御徒町 / 神田・秋葉原、水道橋 / 日本橋・馬喰町 / 八重洲・京橋 / 大手町・丸の内・有楽町)を舞台に、38組のアーティストによる作品が展開される。国内からは、秋山珠里、岩岡純子、L PACK.、大内風らのアーティストが参加し、国外からは、ナラカ・ウィジェワルダネ(スリランカ)、カミラ・スヴェンソン(ブラジル)、ナラカ・ウィジェワルダネ(スリランカ)、カミラ・スヴェンソン(ブラジル)らのアーティストが名を連ねている。



また、「スキマプロジェクト(仮)」、写真プロジェクト「Tokyo Perspective」、海外アーティスト公募プロジェクト「SOCIAL DIVE」、「看板建築プロジェクト」、「海外連携プロジェクト」など、さまざまな展示やイベントを通じて市民とふれあいながらまちと人のあり方を探る。

そのほか、「さんぽ大学特別講義」と題した散歩にまつわる特別講義や建築史家・建築家で東京大学名誉教授として知られる藤森照信による木造建築のレクチャーツアーなど、散歩イベントやワークショップなども多数設けられている。

芸術祭開催発表に寄せて、総合プロデューサー・中村政人と、キュレトリアルメンバーの西原珉からのコメントも公開された。
東京の地場に発する市民による国際芸術祭「東京ビエンナーレ2025」開催によせて
「ミッションは、東京にダイブし、街と深く関わること」東京ビエンナーレは、東京という都市のさまざまなエリアに「飛び込む」ことで、そこに集い、暮らす人びとの営みや風土の中に息づく魅力、新たな価値を発見し、とも に創り上げていく「ソーシャルダイブ(social dive)型」の国際芸術祭です。
今回のテーマ「いっしょに散歩しませんか?」は、「誰と」「どこを」歩くかによって私たちのつながり方が変わることに着目し、私たちをやわらかく、優しく結びつける新しいかたちの「散歩」を創造する試みです。その未知なる散歩を通して、人と人、人と都市の出会いが生まれる「ソーシャルダイブ」としての表現を探求します。
対立が深まる世界情勢の中でも、たとえ初対面であっても、誰かと並んで歩くという身体的な行為が、互いを知り合うきっかけとなり、街や文化への関心を芽生えさせ、対話の種となっていく。そして、関東大震災や第二次世界大戦により二度にわたって焼け野原となったこの都市・東京が、今なお多様な街並みと人々の暮らしを育んでいることに対し、「ともに歩ける」こと自体の奇跡的な時間を大切にしたいと考えています。特に、江戸から続く都市生活の知恵や信仰、自治、芸能、町人文化といった「基層文化」の存在を、私たちは忘れてはなりません。それらは目立たぬかたちで今も街のあちこちに息づいており、現代において新たな創造の土壌となりうる重要な文化資源です。東京ビエンナーレ2025では、こうした見えにくい東京の基層文化を丁寧にすくい上げ、アートプロジェクトを通して未来につないでいく試みに挑戦します。
そのためにも、アーティストの想像力と方法論によって、東京の街角をあえて漂流し、積極的に「道草」するような表現のあり方を模索します。新たな関係性を紡ぐ「散歩」するアートプロジェクトが、街と人をやわらかくつなぎます。
たとえば、創建400年を迎える東叡山 寛永寺でのインスタレーション作品や、街のスキマにひっそりと置かれた作品群に会いに行くとき、その道すがら出会う風景や人々との何気ない交流にこそ、今ここでしか味わえない発見があります。気になるものに出会ったときは、ぜひ立ち止まって、少し時間をかけて眺めてみてください。そこには、思いがけなく心がひらく瞬間が潜んでいるかもしれません。
東京ビエンナーレ2025は、14か所におよぶ展示会場、38名の参加アーティストによる作品、たくさんの散歩プログラムを通して、東京にダイブし、まちと深く関わるアートプロジェクトを生み出します。
総合プロデューサー 中村政人
東京ビエンナーレ2025 テーマ “いっしょに散歩しませんか?”について
キュレトリアル・メンバー 西原珉
移動と精神の自由、日常と非日常の往復、歴史の横断――散歩は古来、人間にさまざまな恩恵をもたらしてきました。制約の多い空間と時間に暮らす現代の都市生活者にとって、「歩くこと」の価値はいっそう高まっています。
ここで美術の近い歴史を見てみると、1960年代以降、アーティストたちは自らの身体をメディウムとし、世界を読み替える歩行の実践を広げてきました。ヨーコ・オノ、ブルース・ナウマン、ヴィト・アコンチが相次いで“歩行”を作品化したのを皮切りに、ハミッシュ・フルトンは現在に至るまで〈Walks〉シリーズを継続。河原温が日々の移動を地図上に赤線で刻んだ《I Went》、リチャード・ロングのランドワーク、中国の万里の長城を横断したマリーナ・アブラモヴィッチ、都市を聴覚的に再構成するジャネット・カーディフ、フランシス・アリスの数々のプロジェクト──歩行は多彩な表現へと展開してきました。世界各地を歩くアーティスト、ガブリエル・オロスコは都市を「スタジオ」と呼び、街での偶発的な発見の瞬間こそが作品であると説きます。東京ビエンナーレ2025は、これらのアーティストたちに倣い、散歩=創造行為、都市=表現の場と捉え、作品展示やプロジェクトを通じて「遊ぶ・彷徨う・道草する・出会う・思索する・発見する」アートスタジオとしての東京へ人々を誘います。参加アーティストそれぞれによる街での創造行為を鑑賞する一方で、観客自身が創造者へと転じる契機を得ることができるでしょう。
本芸術祭は、東京という巨大なテクストを背景に、歩行という最小単位の行為から都市の潜在資源を再発見・共有する回路を構築する試みです。誰もが都市を「歩きながら創造する」主体となり、歩行の思考を通じて新たな公共の地平をひらく――それが東京ビエンナーレ2025のヴィジョンです。
『東京ビエンナーレ2025』
2025年10月17日(金)〜 12月14日(日)
エトワール海渡リビング館 11:30~19:00(予定)/東叡山 寛永寺 11:30~16:30
いずれも月曜日、火曜日休業
【チケット情報】
■2会場共通チケット(エトワール海渡リビング館、東叡山 寛永寺)
前売券(9月上旬~10月16日):一般2,500円、学生1,500円
会期中販売券(10月17日~12月14日):一般3,000円、学生1,800円、高校生以下無料
■会場別チケット
会期中販売券のみ
エトワール海渡リビング館:一般2,200円、学生1,500円、高校生以下無料
東叡山 寛永寺:一般1,200円、学生500円、高校生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名までは観覧無料となります。当日、会場のチケット売り場で手帳をご提示ください。
※学生、高校生以下の場合、会場にて学生証等を提示していただく場合があります。
※公共空間の展示の多くは無料で体験できます
【参加アーティスト一覧(50音順)】
国内
秋山珠里、岩岡純子、L PACK.、大内風、片岡純也+岩竹理恵、片山真理、窪田望、栗原良彰、黒川岳、小瀬村真美、SIDE CORE、佐藤直樹、6lines studio、鈴木真梧、鈴木昭男、鈴木理策、高橋和暉、寺内木香、戸田祥子、豊島康子、中村政人、畠山直哉、藤原信幸、ホガリー、港千尋、ミルク倉庫ザココナッツ、村山悟郎、森淳一、森靖、与那覇俊、渡辺英司
海外
ナラカ・ウィジェワルダネ(スリランカ)、カミラ・スヴェンソン(ブラジル)、Tenthaus Art Collective and the OVEN Network (テントハウスアートコレクティブ & オーブンネットワーク/ノルウェー)、マリアム・トヴマシアン(アルメニア)、チュオン・クエ・チー/ グエン・フォン・リン(ベトナム)、ピョトル・ブヤク(ポーランド)、アダム・ロイガート(スウェーデン)
【開催概要】 (2025年7月17日現在)
【名 称】(日)東京の地場に発する国際芸術祭「東京ビエンナーレ2025」
(英)Art Projects Originating in Local Areas of Tokyo Tokyo Biennale 2025
【テーマ】(日)いっしょに散歩しませんか? (英)Wander for wonder
【総合プロデューサー】中村政人
【キュレトリアル・メンバー】並河進 西原珉、服部浩之
【事業プロデューサー】中西忍
【会 期】 2025年10月17日(金)〜 12月14日(日)
【会 場】拠点展示:東叡山 寛永寺、エトワール海渡リビング館
展示エリア:上野・御徒町エリア、神田・秋葉原エリア、水道橋エリア、日本橋・馬喰町エリア、八重洲・京橋エリア、大手町・丸の内・有楽町エリア 計6箇所
【主 催】一般社団法人 東京ビエンナーレ
【後 援】台東区 一般社団法人中央区観光協会
【特別助成】 公益財団法人石橋財団
【助 成】アーツカウンシル東京 [東京芸術文化創造発信助成(単年助成)]創造環境向上活動
「アートインタープリター育成講座プログラム*」に対して
【協 賛】三井不動産株式会社 三菱地所株式会社 株式会社 大丸松坂屋百貨店 富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社
【事業パートナー】株式会社東京ドーム
【特別協力】東叡山 寛永寺 株式会社エトワール海渡
【協 力】NTT東日本 海老原商店 株式会社大手町ファーストスクエア
東京藝術大学 東日本旅客鉄道株式会社
【補助事業】令和7年度日本博2.0事業(独立行政法人日本芸術文化振興会/文化庁)
アートインタープリター育成講座プログラム(実施予定)