伊藤潤二原作の新作アニメ『クリムゾン』の制作が決定した。
伊藤潤二は、「漫画界のアカデミー賞」とも呼ばれるアメリカの漫画賞・アイズナー賞を4度受賞したホラー漫画界の鬼才。代表作『富江』『双一』首吊り気球』など20タイトルをアニメ化した『マニアック』は、2023年1月にNetflixで世界独占配信され、アジア各国でTOP10入りを記録。2024年にはTOKYO MXで地上波放送も行われた。
『コレクション』『マニアック』に続くアニメ化第3弾となる同作では、「怪物」というコンセプトのもと、独特の狂気に満ちた傑作を厳選。深い赤色を意味する「クリムゾン(CRIMSON)」をタイトルに冠し、不気味で奇怪な世界に浸ることのできる恐怖物語集となっている。
合わせて、同作の主題歌が松任谷由実による書き下ろし楽曲”烏揚羽”に決定したことも発表された。松任谷の参加は、伊藤と松任谷との交流をきっかけに実現。両者の交流は、2024年に東京・世田谷文学館で開催された『伊藤潤二展 誘惑』を訪問した松任谷がその様子をSNSで投稿し、その投稿を松任谷の大ファンだった伊藤が目にしたことでスタートした。伊藤が松任谷のラジオ番組『松任谷由実のオールナイトニッポンGOLD』に出演した際、松任谷は初対面となる伊藤を『伊藤潤二展 誘惑』で購入した「深海の美女」がアレンジされたデザインの浴衣で迎えた。
主題歌 “烏揚羽”は、「冥界」と「現世」の2つの世界をつなぐ存在である烏揚羽を主人公にした楽曲。今秋発売される松任谷40枚目のオリジナルアルバムに収録される予定で、「異空間をミックスする」というコンセプトは現在制作中のアルバムにも繋がっている。伊藤がイラストを描き下ろした烏揚羽が登場するミュージックビデオも公開された。
同作の制作発表と主題歌決定の発表は、7月3日(木)から6日(日)にフランス・パリにて開催されている『Japan EXPO Paris 2025』にて行われた。伊藤と松任谷からのコメントも到着している。

現在、私の原作を基にした「伊藤潤二『クリムゾン』」というアニメが作られています。このタイトルを聞いただけでゾクゾクして期待が高まります。新旧の私の短編の中から、特に血のように深い赤色を存分に生かせる作品を選んでアニメ化していただけると聞いております。ユーミンこと松任谷由実さんは、世界における最高の作曲家のひとりだと私は思います。今回「クリムゾン」のOPをユーミンさんに担当して頂ける事になりました。これは普通ではありえない事で、本当に夢のようです。最初ユーミンさんのスキャット風のデモを聴かせていただいて、それだけですぐに名曲と感じました。とても情感豊かで、一度聴いたら忘れられないメロディです。最近はこのユーミンさんの新たな名曲が、私の頭の中でエンドレスに流れていて、幸せに浸っております。TVアニメ「伊藤潤二『クリムゾン』」は、真紅のイメージを想起させるアニメシリーズとなるのは重要なポイントだと思います。さらに加えて、松任谷由実さんがOPを担当してくださる事により、「コレクション」や「マニアック」とはまた違った雰囲気の、特別なアニメ作品になる事でしょう。ファンの皆さんも待ち遠しいと思いますが、是非楽しみにしていてください!
伊藤潤二
伊藤潤二作品には、それがどんなにシュールでグロテスクでも、その根底になぜか必ず繊細な“和”の美しさと哀しみが漂っています。むしろ、異形であればあるほど、そこに在るのに決して掴むことのできない何かへの憧憬が炙り出されるのかも知れません。私たち日本のファンも、多くのフランスのファンの方々も潜在的に気づいている共通の美意識。約200年かけて醸造された妖しい世界を一緒に旅することが出来るなんて、なんと素敵なことでしょう!このMUSIC VIDEOは、伊藤潤二『クリムゾン』に先立つ小旅行。案内役は変幻に飛びまわる(烏揚羽)。伊藤潤二さんにお願いして黒い蝶の画を描いていただきました。今回テーマ曲を依頼され、ラビリンスのようなコード進行にのせたメロディと共に私が思い浮かべたのは、冥界と現世を繋ぎ、異次元を彷徨うメッセンジャーの形。偶然、フランス語でも黒い蝶はそんな意味を持つそうですね。私の描いたイメージは間違いではなかったと思えました。本編公開までしばらくのあいだ、ひとりでも多くの方にこの(烏揚羽)のMUSIC VIDEOで『クリムゾン』への期待をふくらませていただけたら幸いです。
松任谷由実