映画『急に具合が悪くなる』の製作が決定した。
『ドライブ・マイ・カー』や『悪は存在しない』などで知られる濱口竜介監督の最新作である同作は、フランス / 日本 / ドイツ / ベルギーによる国際共同作品として制作。原作はがんの転移を経験しながら生き抜く哲学者・宮野真生子と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者・磯野真穂が交わした20通の往復書簡を同名で書籍化したもので、20年の学問キャリアと互いの人生を賭けたふたりの交流が綴られていた。
映画ではフランス・パリ郊外の介護施設施設長であるマリー=ルー・フォンテーヌが、日本人演出家・森崎真理と出会うことから物語が展開。同じ名前の響きを持つ偶然に導かれてふたりの交流は始まるが、あるとき真理は「急に具合が悪くなる」。真理の病の進行とともに関係が劇的に深まる様子や、心の交流を描く内容となっている。主演のマリー=ルー役にセザール賞主演女優賞を受賞し国際的に活躍するヴィルジニー・エフィラ、森崎真理役には長年トップモデルとして活躍し俳優 / 映画監督としても数々の実績を持つ岡本多緒(TAO)を迎えている。
情報解禁に際し、濱口からのコメントが公開されている。
宮野真生子さん、磯野真穂さんの著作『急に具合が悪くなる』の映画化をここに発表できることを、とても嬉しく思います。原作者のお二人にも、この場を借りて、心よりの御礼をお伝えしたく思います。
今はパリで撮影の準備をしております。約4年前にオフィス・シロウズの松田広子プロデューサーからこの本を映画原作として提案されてから、ずいぶん長い時間を経ました。お二人の往復書簡から成るこの本を初めて読んだときの感覚は「心を強く動かされた」という言葉では足りません。往復書簡という形式、しかも二人の学者の全キャリアと魂を賭けたような議論に対していったいどう取り組んだらよいかは、まったく見当はつきませんでしたが「映画にしたい」という火が心に灯ったような感覚がありました。その灯火に導かれて、随分と遠くまで来てしまったように思います。
映画『急に具合が悪くなる』はフランスの介護施設のディレクター・マリー=ルーと、がんを患う日本の劇演出家・真理の間にとある偶然から生じた、出会いと交流を描く物語になります。どうしてこうなったのか、短くは決して説明できないというのが正直なところです。ここまでの曲がりくねった歩みを要約することは不可能に思えます。なので、自分を導いてくれた原作の一節を書きつけることにします。
「関係性を作り上げるとは、握手をして立ち止まることでも、受け止めることでもなく、運動の中でラインを描き続けながら、共に世界を通り抜け、その動きの中で、互いにとって心地よい言葉や身振りを見つけ出し、それを踏み跡として、次の一歩を踏み出してゆく。そういう知覚の伴った運動なのではないでしょうか。」
マリー=ルーをヴィルジニー・エフィラさんが、真理を岡本多緒さんが演じることになります。お仕事を以前から存じてはいたものの、まさかこうしてご一緒できる機会があるとは思っていなかったお二人なので、とても興奮しています。今夏、最高のキャスト・スタッフと撮影する映画『急に具合が悪くなる』が、原作の引いたラインを更に延ばしていくものとなるよう、自分にできることは何でもやるつもりでいます。どうぞ、ご期待ください。
濱口竜介
急に具合が悪くなる

監督・脚本:濱口竜介
原作:宮野真生子・磯野真穂著『急に具合が悪くなる』(晶文社)
主演:ヴィルジニー・エフィラ、岡本多緒
製作:Cinefrance Studios, オフィス・シロウズ, ビターズ・エンド, Heimat Film, Tarantula
提供:「All of a Sudden」JPN Partners
フランス=日本=ドイツ=ベルギー合作
公式X:@FilmAOAS
2026年、全国ロードショー
<配給・宣伝>ビターズ・エンド