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Suchmos、5年半ぶりの復活ライブレポート「こんなに大事な人たちを待たせてた」

2025.6.22

#MUSIC

「媚びない」「自由」のスタンス

“PINKVIBES”で歌った<First Choice Last Stance>というフレーズは、Suchmosが設立したレーベル「F.C.L.S.」の名前にも掲げるほど、彼らが大切にしているものである。彼らが最初から貫いてきたスタンスのひとつは、「媚びない」ということだ。これはどのバンドマンも大事にしたいと思っているものではあるが、それを貫くことは実に難しい。媚びないこと、無理にみんなと同じになろうとしないこと、自分の感性を大切にすること、自分自身を生きることが、「Suchmos」という生命体の佇まいや生き様になり、それが時代から愛される魅力のひとつにこれまでもなっていた。

そして今のSuchmosは、これまで以上に「媚びない」というスタンスを、自然体のまま体得しているように見えた。より深みのある「自由」を手にしているように映ったのだ。

新曲(しかもEP『Sunburst』に収録予定もなし)“To You”は、全員で悪ガキのようなシャウトから始め、山本のベースがグルーヴする中で「言いたいこと言いにきたよ」と言って、曲の中で「お前生きているかい?」と繰り返し、さらにYONCEが花道でジョーカーのような不敵な笑みを浮かべた。この一連のシーンは、彼らの「媚びない」スタンスを象徴したひとつだ。またこの曲は、YONCEがHedigan’sで発揮しているロックンロールと、TAIHEIが賽やN.S.DANCEMBLEで発揮しているホーンサウンドのミクスチャーのようで、この先Suchmosの音楽性がより自由に広がっていくことも予感させた。

さらにもうひとつ、EP『Sunburst』収録予定がなく披露された新曲が“Latin”。“PINKVIBES”でも、その他の楽曲でも、YONCEは音に身を委ねるように身体を揺らしたりステップを踏んだり、音に導かれるように発声したことが印象的だったが、この曲では<思いつくままに踊り続けろ/思いつくままに歌い続けろ/思いつくままにしゃべり続けろ/思いつくままに動き続けろ>と、暗黒大陸じゃがたらのカバーを込めたフレーズが繰り返された。

そんな曲中の出来事を、書き記しておきたい。暗転したまま、全員が思いつくままに言葉をシャウトしたのだ。

「今日ここに来れなかった仲間に一言言わせてくれ。バカヤロー! ありがとなー!」(OK)

「復活しました、Suchmos! このあとも楽しんでね!」(TAIKING)

「超気持ちいいー!」(山本)

「みなさんお久しぶりです! 小学生の遠足のときみたいに、ワクワクが止まらなくて寝れないっていうアレを久々に経験しました。みなさんの前で楽しくやらせてもらってます! これからもどうぞSuchmosをよろしくお願いします」(TAIHEI)

「みなさんどうもこんばんは。お久しぶりです! 会いたかったー! 隣のみんなとか、今日はすげえ仲良くなれる人たちばっかりだと思うから、どうか思い出を深めて楽しんで帰ってください。ありがとう!」(Kaiki Ohara)

照明を点けないままこれらを語ったのは、あくまでライブの主役は音楽であり、しんみりとさせたくはないといった考えがあったのだろうと想像するが、「彼らなりの<恥じらいの現れ>でもあるな」と思っていたところ、次の曲が“GAGA”であったからクスリと笑ってしまった。

2015年のデビュー以降、急速に階段を駆け上がり世間から注目を集めるあいだ、それぞれが様々な感情を経験していた。活動休止期間中も、大切なメンバーを失って、人生や生き方、音楽について、それぞれがいろんな想いを巡らせたことだろう。その中で、雑念を振り払い、不要なものを削ぎ落とし、本当に大切にしたいことだけを研ぎ澄ましたような、そんな生き方をそれぞれが体得しているように見えた。どうにもならないことはある。なんとかなることも意外とたくさんある。気にしなくていいことはいい。わからないことはわからないままでいい。そういうことを“Overstand”=「Understand」以上に深く理解し、より大きな自由を彼らは手にしているようだった。

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