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『国宝』だけではない、日本映画の新しい風
木津:もう一つローカリティーの文脈でいうと、三宅唱監督の『旅と日々』もさきほどの作品群と並べて語られるべき作品だと思います。この作品を観たときに、三宅監督が世界の映画祭やJAIHO(※)に関わってやってきたことが活きていて、たとえばケリー・ライカートともシンクロするような感じがしました。一つひとつのショットの強さが出ていて。日本のローカリティーに根ざしながら、世界に通用する映画言語で語る作家だと思います。

長内:『旅と日々』は、もちろん悪い映画ではなかったけど、僕が期待していた作品ではなかったです。都市に生きるなんでもない人々を描いて、色々な人を照らしている前2作の広がりに対し、今回は手のひらサイズの小品によくまとまりすぎてしまった印象があって。
木津:あの作品の中盤、脚本家や映画制作者としての孤独が滲み出るパートがあるじゃないですか。あそこに三宅監督のパーソナルな部分が凝縮されていて、とても好きなところなんです。
―今年は『国宝』を中心に、国内の映画も話題になる作品は多かったですが、他に気になった作品はありますか?
木津:国内の作品で面白いと思ったのは、団塚唯我監督の『見はらし世代』や、小島央大監督の『火の華』です。団塚監督の作品は、濱口竜介以降を感じさせつつ、監督自身の父親をモデルにした驚くほどのパーソナルさがいびつな魅力を持っていました。
『火の華』も、自衛隊をモチーフに社会派的な装いをしつつ、あくまで娯楽フィクションとして成立させている。今までの日本映画にはあまりなかったスタイルで、若い世代の独特な文体を感じました。
長内:好きだった作品は、脚本家・向井康介さんの2作品、『愚か者の身分』(永田琴監督)『平場の月』(土井裕泰監督)でした。全く異なる層の人々を描いているのに、現代口語のセリフがとても自然で、リアルなんですよね。この2本は秋の拾い物でしたね。50歳近いベテランですが、今また勢いを感じました。
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