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ファンタジー設定で描く現実的な日常生活

つまり本作は、「未来のオット」を探す時を超えたラブストーリーでもあるのだが、身にしみて伝わってくるのは、現代で子どもを育てること、ひいては子どもと生活すること自体の大変さだ。「好き」だけでは乗り越えられない現実が、何度も画面に差し込まれる。とりわけ顕著なのが、未来たちの食事のシーン。
たとえば未来は、特売で買ったプリンを慈しみ、コスパ重視の大容量焼酎ボトルで作るレモンサワーを楽しみにする(しかしレモンが高くて買えない……!)。大食いYouTuberのASMR動画を横目に、豆苗炒めと解凍したご飯で夕食を済ませるシーンには、いまどきの崖っぷちアラサー女性の生活感がそのまま出ていた。ファンタジー設定でありながら、日常生活の質感は驚くほどに現実的だ。
そんな自分の生活もままならないところに、さらに子どもが増える。しかも颯太は、最新型のスマートウォッチとおもちゃのカメラなど、簡易的な荷物を持ってきただけで、保険証など身分を証明するものを一切持っていない。もしかしたら充電切れのスマートウォッチに搭載されているのかもしれないし、2036年時点の保険証を持ってきていても使えないかもしれないが、とにかく、現代で社会保障制度を受けられないことは致命的だ。10割負担の医療費、非認可保育園の高額な利用料。毎回リアルすぎる数字が未来に重くのしかかってくる。