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刺激や変化だけではなく、「ただいま」と言える場所作りも
ここまで変化や挑戦の重要性を説いてきたが、それだけでは参加者も疲れてしまう。いつ帰ってきても変わらない場所を大切にすることで、出店者にとっても、参加者にとっても、イベントが人生の一部になる。12年間出店を続けている京都の人気店・森林食堂のほりくみこさんにとって、『森道』は自身の現在地を確かめる場所だという。
ほり(森林食堂):イベントに呼ばれて、出店して、カレーを出す。毎年一回ここに来ることで、「ああ、こういう想いでやっていたな」と原点を思い出せるんです。お客さんにも、「僕の原点です」と言って、何度も食べに来てくれる人がいるんですよ。誰かの原風景になれる、何かのきっかけになれるって、うれしいですよね。忘れているわけじゃないけど、毎年『森道』に来てそれを確かめに来ている部分は大きいですね。

アーティストが物質を眼前に格闘し、新しい価値観を生み出していくのと同じ様に、モノづくり精神をスパイスと共に注ぎ込み、愛される唯一のカレーを作り出す。店舗化しオリジナルのビールも出来た、出張カレー屋。出張しだして18周年、店舗化13周年。それが森林食堂です。

そして「帰ってきた」と感じさせてくれるのは、会場の中だけではない。『森道』開催地である蒲郡市にお店を持つ、喫茶hirayaの小田アキヨシさんは、イベント会場を一歩出たあとの街でも、来場者をもてなす工夫をしている。
小田(喫茶hiraya):イベントに出て盛り上がるってことよりは、地元としてお客さんを楽しませたり、来てくれた人たちをもてなしたい。会場から家が近い分やれることも多いので、仲の良い出店者の手伝いをすることもあります。『森道』が終わった翌日も、蒲郡にお店を持っている僕らは普通に営業するんですよ。みんな、終わった後の帰りにちょっとでも寄ってもらいたいなと思ってる。だから僕らは、月曜日までが『森道』なんですよね。

『森道』の開催地である愛知県蒲郡市にて、2つの平屋と13のガレージからなる珈琲屋。「地元に欲しかった場所をつくる」をテーマに、年間を通して蒲郡を盛り上げるイベントを企画している。
最後に忘れてはならないのが、これらすべての試みを支える土台についてだ。自由=無法地帯ではない。主催者や出店者が、目に見えない部分で徹底的な真面目さを貫いているからこそ、安心感のあるカオスを作ることができる。TENTOの山本さんは、そのバランス感覚にこそ『森道』運営チームの核があると指摘する。
山本(TENTO):『森道』の主催者は、お客さんにも出店者にも、いかに楽しんでもらえるかを第一に考えているから、そのエネルギーが濃度として表れているんだと思います。でも、みんな根はとても真面目で、来てくれたお客さんに迷惑をかけないとか、法律を破らないとか、怪我人には全力で対処するとかそういうことは必ずします。楽しいことを楽しく届けるためには、ただ真面目なだけでは届かないということをちゃんとわかっている人たちが運営しているんだなと感じます。