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境界線をあえて曖昧に。混沌が当事者意識を育む
効率的な運営を考えた時、エリアを明確に区切り、出店者向けに細かくルールを設けるというのがよくある方法だろう。しかし『森道』は、管理をしすぎないことによって偶発的なにぎわいを生み出している。高円寺のカレー店・ネグラの大澤思朗さんは、会場全体に漂う「境界線のなさ」に魅力を感じると言う。
大澤(ネグラ):『森道』って、エリアがあるけど、その境界線がない感じがするんです。普通、イベントはエリアがきっぱり分かれているじゃないですか。『森道』だとそれぞれの出店者が作る賑わいの場、盛り場と盛り場が重なって、グラデーションが起きていますよね。サイズ感が小さいものからめちゃくちゃ大きいものまであって、大中小が重なりあっている。それがすごく魅力的で。出店している人のコンセプトを見ても、気持ちがすごく伝わる場作りをしているなと思います。

日本各地、異国の厨房で料理を経験し、東京・高円寺で「即興 / 越境」をテーマに架空の庶民料理を作っている。

余白のある会場構成は、出店者のクリエイティビティを刺激する。「ここなら何をやってみてもいいんだ」という解放感は、予想外のコンテンツを産む土壌となる。名古屋のカルチャーを発信するWEBマガジン「LIVERARY」による別冊的なお店・LIVERARY Extraの武部敬俊さんは、その余白を存分にプレイしている一人だ。
武部(LIVERARY Extra):僕は基本的に、『森道』で誰もやってないことをやるというのをテーマにしてますね。既にあることと同じことをやっても意味ないんで、みんながやってないことの隙間を探してとにかくやっています。例えば今年は合コンを開催しましたけど、合コンなんて『森道』で誰もやらないじゃないですか。他にも過去にバンドマンやラッパーを混ぜたラップバトルを行ったり、出店ブースとステージを合体させた、巨大な鉄の要塞みたいなエリアを砂浜につくったり。もちろん需要と供給の中でマッチするものをやっているけど、そういうのばかりですね。

名古屋を中心に東海地方のカルチャートピックを紹介しているWebマガジンLIVERARYが運営する、神出鬼没な期間限定ショップ。「変てこなコンビニ」をテーマに、平山昌尚、大橋裕之らと制作したオリジナルグッズを販売している。

この自由な空気感は、歴史ある老舗の酒蔵のインスピレーションにもなっている。1711年創業の酒蔵・仁井田本家の内藤高行さんは、ここで得た空気感を参考に、伝統を届ける自社のイベントを発展させているという。
内藤(仁井田本家):仁井田本家では年に一回、蔵を開放するイベントを行っているのですが、その場作りの雰囲気は『森道』から多くのヒントをもらっています。イベントの出店者も、『森道』で出会った方々にお願いしていて、「この人たちなら安心して任せられる」と思える信頼感があるんです。おかげで、うちのイベント自体もかなり進化してきたと思っています。『森道』のような場所で、日本酒を若い人たちに手に取ってもらえる機会があることはすごく貴重だと感じていますし、こういう自由な空気の中だからこそ、伝統的なものの魅力もしっかりと伝わる気がしています。

福島県郡山市1711年創業の日本酒を醸造する酒蔵。「日本の田んぼを守る酒蔵になる」を使命として、日本酒だけでなく米を使ったさまざま食品の開発をしている。