Webメディア「CINRA」が主催するアワード「CINRA Inspiring Awards Edition 2026」の受賞作品が発表された。
本アワードは、既存の形式にとらわれず、社会的課題や未来の生き方を考えさせるカルチャーやアート作品を讃えるもの 。第2回となる今回は、2025年以降に発表された作品を対象に、朝井リョウ、大島依提亜、おかざき真里、三宅香帆、山中瑶子、吉田恵里香の6名が審査員を務めた。
受賞作として、上村裕香の小説『救われてんじゃねえよ』『ほくほくおいも党』『ぼくには笑いがわからない』をはじめ、綿矢りさの小説『激しく煌めく短い命』、呉美保監督の映画『ふつうの子ども』、団塚唯我監督の映画『見はらし世代』、有田咲花の音楽作品『鯨』、トキワセイイチの漫画『三角兄弟』の全8作品が選出された。
3月31日(火)以降、受賞者と審査員が登場するPodcast番組やインタビュー記事などの関連コンテンツが順次公開される予定となっている。
⚫朝井リョウ賞

◆作品名
『救われてんじゃねえよ』『ほくほくおいも党』『ぼくには笑いがわからない』
◆作品ジャンル
小説
◆作品クレジット
上村裕香著『救われてんじゃねえよ』(新潮社)『ほくほくおいも党』(小学館)『ぼくに
は笑いがわからない』(KADOKAWA)
◆作品説明
「R-18文学賞」大賞を受賞し、2025年に警報級の大型新人と称され作家デビューした上村
裕香(25)が2025年に刊行した全ての著作で受賞。
難病の母を介護しながら高校に通う17歳の沙智を描いた満身創痍のデビュー作『救われて
んじゃねえよ』(新潮社)、左翼政党員の父との対話を切望する18歳の千秋の物語『ほく
ほくおいも党』(小学館)、 真面目な大学生・耕助が“恋”と“自分のことば”を手に入れるた
めに漫才を始める『ぼくには笑いがわからない』(KADOKAWA)。
上村裕香の小説は、令和に一番刺さる作品として、若者達から圧倒的な支持を得ている。
◆審査員コメント
『救われてんじゃねえよ』の鋭い筆致、『ほくほくおいも党』の題材の扱い方、『ぼくには
笑いがわからない』の煌めく青さ。魅力が全く異なる三作をデビュー年にどんどこ送り出す
稀有な逞しさに、脅威を感じました。
⚫大島依提亜賞

◆作品名
ふつうの子ども
◆作品ジャンル
映画
◆作品クレジット
監督:呉美保
脚本:高田亮
出演:嶋田鉄太 瑠璃 味元耀太
ⓒ 2025「ふつうの子ども」製作委員会
◆作品説明
上田唯士(ゆいし)、10才、小学4年生。両親と三人家族、おなかが空いたらごはんを食べ
る、いたってふつうの男の子。最近、同じクラスの三宅心愛(ここあ)が気になっている。
環境問題に高い意識を持ち、大人にも臆せず声を挙げる彼女に近づこうと頑張るが、心愛は
クラスのちょっぴり問題児、橋本陽斗(はると)に惹かれている様子。そんな三人が始めた
“環境活動“は、思わぬ方向に転がり出して――。
◆審査員コメント
子どもが生き生きと描かれている / 子どもとは思えない演技といった常套句は、この映画
には当てはまらない。子役から解き放たれた俳優が̶̶ ひいては人間が描かれているから
だ。映画の在り方そのものへの子どもたちの反逆。
⚫おかざき真里賞

◆作品名
見はらし世代
◆作品ジャンル
映画
◆作品クレジット
団塚唯我監督長編デビュー作『見はらし世代』
出演:黒崎煌代、遠藤憲一、井川遥、木竜麻生
©2025シグロ/レプロエンタテインメント
◆作品説明
2025年5月、第78回カンヌ国際映画祭の監督週間に日本人史上最年少、26歳の監督作品が
選出された。オリジナル脚本・初長編作品でその快挙を成し遂げたのは、短編『遠くへいき
たいわ』(ndjc2021)で注目を集めた団塚唯我監督。
主人公の青年・蓮と、結婚を控え将来について悩む姉。そして母の喪失をきっかけに姉弟と
疎遠になった、ランドスケープデザイナーの父。渋谷の街を舞台に、関係をふたたび見つめ
直そうとする彼らを描く本作は、普遍的な家族の風景から、都市の再開発がもたらす影響ま
でを繊細に描き出す。きわめて軽やかに、ただ、決して切実さは失わずに。観客に開かれ
た、新人監督の瑞々しい感性による新しいスタイルの日本映画が誕生した。
◆審査員コメント
私は作中の「父親」に近い年齢で母親で渋谷を中心に生活しモチーフになった宮下パークの
変容も見てきた世代です。この映画は「次の世代」からのアンサーとして個人的にとても刺
さりました。個人的なことは普遍的なこと。
⚫三宅香帆賞

◆作品名
激しく煌めく短い命
◆作品ジャンル
小説
◆作品クレジット
綿矢りさ『激しく煌めく短い命』(文藝春秋)
◆作品説明
二人の恋の炎は、すべてを焼きつくす。
京都と東京を舞台に描く、集大成的恋愛小説。
京都に暮らす久乃(ひさの)は、中学校の入学式で出会った同級生の綸(りん)にひと目
で惹かれ、二人は周囲の偏見にも負けず、手さぐりで愛をはぐくんでいく。
「名前なんか、どうでもいーやん。私は久乃が好き。久乃は私が好き。それで十分やろ」
しかしあることがきっかけで二人は決定的に引き裂かれる。
そして十数年後、東京の会社に勤める久乃は思いがけない形で綸に再会するのだった ̶。
綿矢りさ史上最長、圧巻の1300枚!
◆審査員コメント
同性同士の恋愛を描いた物語は数あれど、平成~令和の時代の変遷とともに、労働や差別へ
の考え方の変化、自分を大切にすることそのものが変わってきた様子を描いた圧巻の小説だ
った。自分たちの世代の物語だ、と確信する人がたくさんいる物語ではないかと感じる。
⚫山中瑶子賞

◆作品名
鯨
◆作品ジャンル
音楽
◆作品クレジット
有田咲花
◆審査員コメント
昨年の夏はこのアルバムによって乗り越えられました。世界の崩落をものともしない泰然自若さと色気。凪いだまま波立つような、有田さん固有の重力を感じて離れられません。なにより、ずっと耳に残しておきたい、いい声。
⚫吉田恵里香賞

◆作品名
三角兄弟
◆作品ジャンル
漫画
◆作品クレジット
© トキワセイイチ / ヒーローズ「HERO’S Web」
◆作品説明
宇宙から来たかわいい3つの三角形の物体。
彼らは三角兄弟と名乗り、子供と猫の姿になって地球で暮らしはじめた。
地球に観光にくる宇宙人のサポートをしている野庭は不本意にも、彼らのお世話をすること
になってしまう。
さらに、地球には隕石が迫ってきていてーー?
元気な三角の兄弟と疲れた宇宙の大人たちのSF生活漫画。
◆審査員コメント
2025年、何人に「三角兄弟」をお薦めしたか分かりません。人は過ちを犯し、通じ合え
ず、それでも誰かを分かった気になって誰かとのつながりを欲す。誰かと共存する奇跡につ
いて何度も考えさせられる作品でした。