フランス制作のアニメーション映画『アメリと雨の物語』が、快進撃を続けている。第83回ゴールデングローブ賞(アニメ映画賞)へのノミネートに続き、第53回アニー賞において、長編作品賞を含む主要7部門にノミネートされる快挙を果たした。
『ズートピア2』や『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』、そして日本から選出された細田守監督の最新作『果てしなきスカーレット』といった強豪がひしめくなかでのこの結果は、本作の持つ独自のクオリティを証明している。
神戸生まれの作家、アメリー・ノートンによるベストセラー自伝的小説『チューブな形而上学』を原作とした作品で、先日の東京国際映画祭でも先行上映された。
舞台は1960年代、戦後における外国人差別意識が微かに残る日本。特徴的なのは、ベルギー人の幼い子どもアメリの目線から、人間の感情の変化を映し出していることだ。特筆すべきはそのビジュアルだ。輪郭線を強調せず、色彩の重なりだけでキャラクターや背景を構築する独特のタッチは、絵画的な美しさと、子どもの記憶のような曖昧な温かみを同居させている。
そもそも「アニメ界のアカデミー賞」ともいわれるアニー賞は、1972年に国際アニメーション映画協会によって創設された歴史ある映画賞。『鬼滅の刃』のようにテレビアニメの劇場版や中国の作品は入りづらい環境ではあるものの、ジブリ作品や『すずめの戸締まり』といった、日本の作品も度々ノミネートされている。
今回『アメリと雨の物語』がノミネートを果たしたということは、ヨーロッパアニメに世界が注目している証拠ともいえるだろう。
監督を務めたのは、マイリス・ヴァラードとリアン=チョー・ハンのコンビ。彼らは『カラミティ』や『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』で知られるレミ・シャイエ監督のチームで研鑽を積み、その「アニメDNA」を正統に受け継ぎながら、本作で鮮烈な長編監督デビューを飾った。
「アニメは日本が一番!」なんて言っていられた頃は、もう昔の話で、世界各国のアニメ産業にハイアクティブな時代が到来している。
大きな理由は、配信サービスの普及である。2010年後半まで、各国で放送する海外コンテンツは、テレビ局の繋がりやバイヤーの匙加減による部分が大きく、観られる作品も限られていた。ところが配信サービスが普及したことによって、簡単に世界中の作品がタイムリーに観れてしまう環境が出来上がった。つまりライバルは常に世界という意識が圧倒的に強まったのだ。
国策としてアニメ制作に取り組む中国も『羅小黒戦記』、『ナタ 魔童の大暴れ』といった作品で世界を驚愕させているし、日本も『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』といった作品が世界中で公開されている。実はアニメ産業が壊滅状態といわれてきたインドでも、ここ数年でアニメスタジオが続々と誕生しており、2026年3月に開催される第98回アカデミー賞の長編アニメ部門の候補作に『Mahavatar Narsimha』が入ってきたほどだ。
その一方で、ヨーロッパアニメが独自の進化を遂げている。今までにも『ベルヴィル・ランデブー』、『しわ』、『イリュージョニスト』のように、世界で話題になった作品はいくつかあったし、2025年に公開された話題作『Flow』もヨーロッパアニメだが、見てわかる通り、タッチが独特だ。全部が全部ではないだろうし、日本があえて、そういったタッチの作品を厳選して輸入しているのかもしれないが、同じく2025年公開作品でいうと『リンダはチキンがたべたい!』なんかも、かなり独特だった。
『アメリと雨の物語』の存在は欧州発のアニメーションブームが、すぐそこまで来ている。そんな確信を抱かせる一作だ。
『アメリと雨の物語』
監督:マイリス・ヴァラード、リアン=チョー・ハン
原作:「チューブな形而上学」(アメリー・ノートン著)
音楽:福原まり
声の出演(日本語吹替版):永尾柚乃、花澤香菜、早見沙織、森川智之
2025年/フランス/フランス語・日本語/77分/カラー
配給:ファインフィルムズ
映倫:G 文部科学省特別選定(中学校生徒、高等学校生徒、青年、成人、家庭向き)、文部科学省特別選定(小学校児童向き)
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ、駐日ベルギー大使館
英題:Little Amélie or the Character of Rain
HP:littleamelie-movie.com
© 2025 Maybe Movies, Ikki Films, 2 Minutes, France 3 Cinéma, Puffin Pictures, 22D Music
3月20日(金・祝)TOHOシネマズ 日比谷他全国公開
【ストーリー】
1960年代日本—神戸で生まれたベルギー人の小さな女の子アメリ。彼女の成長を描く物語。外交官の家庭に生まれ、2歳半までは無反応状態だったアメリ。その後、子ども時代に突入した彼女は自らを「神」だと信じ、魔法のような世界を生きている。家政婦のニシオさんや家族との日々の生活は、彼女にとって冒険であり、新たな発見の連続。少しずつ変化していく。しかし、3歳の誕生日に人生を変える出来事が起こり、彼女の世界は大きく変わっていく……。誰もが子供時代に夢見た世界を描く感動のアニメーション作品。