レオス・カラックス監督の名作を4Kレストア版特集上映する企画の第1弾として、『ポンヌフの恋人』(1991年)が12月20日(土)より公開される。
同作は、ドニ・ラヴァン扮するアレックスを主人公とした「アレックス三部作」の完結編であり、カラックスの最高傑作との呼び声が高く、フランス映画史に残る名作。
パリのセーヌ河にかかる最古の橋として、観光地としても知られるポンヌフを舞台に、ホームレスになってしまった男女の出会いから始まる物語。人生の終着点にも思えるような地点からの再生を描き、繊細さと荒々しさが混在した感情が、橋の上から打ち上げられる花火、次々と焼かれるポスターなどといった、背景のトーンともリンクする演出が目を惹く作品である。
そんな『ポンヌフの恋人』ではあるが、名作といわれるのと同時に「呪われた作品」としても知られている。その理由としては、クランクインから完成までの間に、あまりにも多くの不運が連発し、2年以上、製作期間も含めると3年以上も時間がかかってしまったからだ。
その一番の理由はロケ地問題とそれにかかった巨額の費用。ポンヌフの撮影許可は簡単なものではなく、長期にわたる交渉の末に許可が下りたことで、映画の3分の2を占める夜間シーンはセットで撮影し、昼間シーンに限って実物の橋で撮影を行うことになった。ところが撮影開始直前でドニ・ラヴァンが思わぬ怪我に見舞われたことで、撮影が中止。翌年にフランス革命200周年を控えるパリでは撮影延期も不可能な状態。だからといって、「アレックス三部作」の完結編でドニに代役を立てることは考えられなかった。
カラックスは悩みに悩んだ結果、夜間シーンのみに使用するはずのセットを大幅に拡張し、そこで昼間シーンも撮影することを決意。しかしそれは、最終的に製作費が30億円にまで膨れ上がることになった、波乱の幕開けでもあったのだ……。
この度、解禁されたのは、そんな大規模オープンセットのメイキング写真。南フランスのモンペリエ近郊ランサルグ村の広大な敷地に壮大な規模で製作されていくポンヌフ、川、橋を囲む建物と街路樹など、もはや映画のセットの域を超えているものばかり。そして今は亡き名カメラマン、ジャン=イヴ・エスコフィエとカラックスの2ショット、ホワイトクリスマスのシーンなど貴重な瞬間が収められている。
またそれに合わせて、作品のクライマックスを象徴する、ホワイトクリスマスのシーンの本編映像も解禁となった。
それはアレックスとミシェルがポンヌフで再会するシーン。約束の日、約束の場所で、互いの姿を見つけ夢中で駆け出すふたり。転んだはずみでアレックスはミシェルの足元まで滑り込み、ミシェルが大笑いする多幸感あふれる場面。暖かい場所に移すのではなく、ふたりの思い出のポンヌフで雪に包まれながらも肩を寄せ合うのが印象的であり、ふたりの愛の出発点だと再確認させる重要なシーンだ。
『ポンヌフの恋人』
2025年12月20日(土)よりユーロスペースにて公開 他全国順次
監督・脚本:レオス・カラックス
撮影:ジャン=イヴ・エスコフィエ
出演:ジュリエット・ビノシュ、ドニ・ラヴァン
原題:Les Amants du Pont-Neuf
1991年/フランス映画/カラー/125 分/DCP/
配給:ユーロスペース
<ストーリー>
天涯孤独で不眠症の大道芸人アレックス(ドニ・ラヴァン)と失恋の痛手と眼の奇病による失明の危機で家出した画学生ミシェル(ジュリエット・ビノシュ)。ホームレスとなった二人は、パリの最も古い橋ポンヌフで出会う。愛を告白できないアレックス、過去の初恋に生きるミシェル。二人の感情の軌跡は、失意と闇からはじまり、息もつかせぬスビードで希望と生命へと疾走し、回転していく…!
公式サイト: http://carax4k.com