GEZAN with Million Wish Collectiveによる『i ai e.p.』が12月中旬にリリースされる。
楽曲“i ai”は、2024年3月に公開されたマヒトゥ・ザ・ピーポーが初監督を務めた映画『i ai』のメインテーマ。
『i ai e.p.』は12インチレコードでのリリースとなり、Side Aには“i ai”が、Side BにはCOMPUMAによる同楽曲のリミックスが収録される。カッティングとマスタリングを手がけたのはDJとしても活動するTOREI。アートワークは東京在住のビジュアルアーティスト / グラフィック・デザイナーのjvnpeyが手がけた。
2024年3月に公開されたマヒトゥ・ザ・ピーポーの初監督作品『i ai』は、赤い色彩に彩られた異形の青春映画であった。
作品コメント 文・大石始(文筆家)
舞台は兵庫の明石と神戸。主人公となる新米バンドマンのコウ(富田健太郎)と、コウが憧れるヒー兄(森山未來)を中心に、生を死をめぐるストーリーが展開される。それはマヒトの実体験を土台にしたものでもあり、現実とフィクションが二重写しになりながら、やがてその境界線はじわりじわりと融解していく。共演はさとうほなみ、堀家一希、吹越満、永山瑛太、小泉今日子、K-BOMB、大宮イチなど個性的な面々。写真家の佐内正史による透明感あふれる映像がこの作品に特別な情感を与えていたことも特筆すべきだろう。
映画のセオリーに囚われることのないその作品には、「壊れゆく社会のなかで他者と関わりながらどのように生きていくことができるのか」という、近年のGEZANの作品やマヒトの文筆活動にも共通するテーマが投げかけられていた。私たちは決してひとりで生きていくことはできない。だが、他者と生きることもまた決して楽なことではない。世界の分断が極限まで進んだこの時代を私たちはどのように乗り越えることができるのだろうか?
監督のみならず、脚本や劇中音楽までマヒトが手がけたこの作品のなかで極めて強い印象を残していたのが、「i ai」と題されたメインテーマ曲だった。GEZANの新曲でもあるこの曲は、ここ数年のGEZANの取り組みの延長上にあるもの。この12インチシングルはその「i ai」を収録しており、初のアナログリリースとなる。
柔らかなギターのアルペジオに導かれ、少しずつ熱を帯びていくその楽曲には、静けさと激しさを内包した映画のムードが凝縮されている。言葉にならない複数の声を束ねた合唱は、社会からこぼれ落ちた嘆きのようにも、歓喜の叫びのようにも聞こえる。GEZANは総勢15名のコーラス隊Million Wish Collectiveとの活動も展開してきたが、ここにはその活動で培われた感覚が活かされている。
また、この曲は9分8秒にわたるゆったりとしたダンストラックと捉えることもできるだろう。南米など各地で生み出されているオーガニックなダンストラックと共通するものがあり、世界各地のグローカルミュージックを扱ってきたGLOCAL RECORDSから、それも12インチシングルというDJフレンドリーな形でリリースされることにも意義がある。
B面にはGEZANとの縁も深いCOMPUMAによるリミックスを収録。アフリカ的なパーカッションで始まり、途中では親指ピアノなどを挟みつつ、ふたたび印象的なあの合唱へと戻る。めまぐるしく起承転結が入れ替わる、18分18秒のショート・ムーヴィー。そんなドラマチックなリミックスである。
カッティング&マスタリングを手がけたのはDJとしても活動するTOREI。アートワークを手がけたのは東京在住のヴィジュアルアーティスト/グラフィック・デザイナー、jvnpey。彼らの愛情あふれる仕事ぶりもこの12インチを特別なものにしている。
「分断」という言葉の対義語をAIに問うてみると、「統合」「連結」「統一」「団結」「融和」という言葉が次々に表示された。どの言葉もどこか白々しく、 こそばゆいが、「i ai」という楽曲に鳴り響く蜃気楼のような合唱は、「分断」の対義語となる新しい言葉を探り当てようとしているようにも思える。映画 『i ai』では「エンドロールが終わった後も共に生きよう」というメッセージが投げかけられていたが、この12インチからは「音が止まったあとも共に生きよう」というメッセージが浮かび上がってくるのである。
『i ai e.p.』

GEZAN with Million Wish Collective
Label:GLOCAL RECORDS
Product Number:GR12-001
Format:12inch
Release Date:2025年12月中旬予定
税抜価格:3,500円
-Track List-
Side A:i ai (09:09)
Side B:i ai ‒ COMPUMA Remix (18:18)
NiEW編集部からのひとこと
47都道府県ツアーを鋭意開催中のGEZAN。GEZANと、そして映画『i ai』と出会った神戸の街で見たい!と先日新幹線に飛び乗って、太陽と虎にて彼らの熱を真正面から受けた。満員のフロア、気が付けばステージ間近にまで押し寄せられていて、隣の人と汗を交換しながらぎゅうぎゅうになって拳をあげた。人生で初めて頭の上に人がいた、ひとはこうやって立つのかという力強さで私の腕を握ったマヒト氏の汗と熱、手のひらの感覚を私は一生忘れないと思う。“i ai”聴けたらいいな〜と思いつつ会場できくことは叶わなかったので、こちらのepでとことん楽しみたい。リミックスにはCOMPUMAさん、こちらも楽しみ。
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