是枝裕和監督による映画『箱の中の羊』が2026年に全国公開される。
是枝が原案、監督、脚本、編集を手掛け、タイトルは小説『星の王子さま』からインスパイアされたという同作。そう遠くない未来を舞台に、ある夫婦がヒューマノイドを息子として自宅に迎え入れるところから始まる物語が描かれる。
是枝監督は同作の企画の始まりは「最新のテクノロジーで死者を蘇らせるという発想から」だったとし、「テクノロジーの進化と人間の内面的なものが衝突することに対する賛否についても題材として興味を持ちました」と語る。また、「死者の蘇りのビジネス」が中国で人気を博していることにも触れ、「今後日本でも起きる可能性があり、想像以上のスピードでテクノロジーが進化しているので、思ったよりも早くそういう事態が到来するなと感じました」とコメントしている。
このたび、同作の物語を紡ぐ重要な夫婦を演じる主演2人の情報も発表された。ヒューマノイドを息子として迎え入れることになった建築士の甲本音々(こうもとおとね)役を綾瀬はるかが、音々の夫で工務店の二代目社長・甲本健介(こうもとけんすけ)役を千鳥の大悟が演じる。大悟は同作が初の主演作となる。
是枝監督作品初参加、初主演作にして綾瀬とも初共演となる大悟は、クランクインにあたり開口一番「ビビってます。」と一言。監督からは「『そんなにきっちりセリフおぼえなくても。僕が現場で耳打ちする感じで、それをそのまま、自分なりにやっちゃってください』と言っていただき、なんかそれは監督がこれまで子役に使ってた手法らしくて」と、演出について話されたといい「そう仰っていただいて非常に気持ちが楽になりました。自由にやっていいんだなっていう、今のところは」と感想を述べた。綾瀬については「一番最初にお会いしたときに『ごめんね、ワシがダンナ役で』と言ったら優しい顔で笑ってくださいました」と出会いの印象を語った。
大悟について監督は「存在感があり、歩き方が独特で、人間味があってすごくいい顔をされています」と評価。「芸人さんやミュージシャンには勘が良く、間合いの取り方がうまく、掛け合いのお芝居が上手な方が時々いらっしゃいますが、大悟さんはまさにそうでした」「勘が当たりました」とコメントしている。
撮影は2025年9月から鋭意進行中。
作品に寄せられた、是枝、綾瀬、大悟からのコメント全文は以下のとおり。
今回の企画の出発点は、最新のテクノロジーで<死者を蘇らせる>という発想からでした。
是枝裕和監督コメント全文
数年前から日本のテレビ番組でもそういった企画があり注目を集めていましたし、テクノロジーの進化と人間の内面的なものが衝突することに対する賛否についても題材として興味を持ちました。去年の春には中国で<死者の蘇り>のビジネスが人気だという記事を読み、秋にそのビジネスをしている方にお会いし、これは今後日本でも起きる可能性があり、想像以上のスピードでテクノロジーが進化しているので、思ったよりも早くそういう事態が到来するなと感じました。
クランクインして3週間近く経ちますが、ヒューマノイド役の少年が人懐っこくて、朝来ると大悟さんの坊主頭をなでなでしているほど懐いていて、彼の存在が大きく和やかな現場です。
久しぶりの綾瀬さんは、相変わらずチャーミングでとても素敵です。今回は感情の変化が難しい役なので、現場でも言葉の一つ一つをどのように届けていくか、人物像含めて一緒に話し合ってやっていこうと思っています。
大悟さんは、存在感があり、歩き方が独特で、人間味があってすごくいい顔をされています。70年代の日本映画界にいた俳優さんのような顔だなと。芸人さんやミュージシャンには勘が良く、間合いの取り方がうまく、掛け合いのお芝居が上手な方が時々いらっしゃいますが、大悟さんはまさにそうでした。勘が当たりました。
子供ともそうですし、撮影現場の中で自分なりの表現を見つけてらっしゃるから、とてもすごいと思います。
綾瀬さんと大悟さん演じる夫婦には期待しかないです!この夫婦と人間ではないヒューマノイドの子供が一緒になった時に、あまり見たことない家族劇になるのではないかと思います。
『海街diary』以来久しぶりの是枝監督作品ですが、変わらずとても和やかな空気が漂う現場でした。
綾瀬はるか クランクイン コメント全文
初日は1カット1カット丁寧に撮影していき、その中で、音々(おとね)の気持ちにイメージが膨らみました。
今回一番楽しみにしているのは、大悟さんと夫婦役ができることです。
始めはわだかまりがある二人が、ヒューマノイドの子供を迎え、様々なことが起き、また心が通い合っていくというお芝居を大悟さんとしていく中で、音々自身がどう成長していくのかとてもワクワクしています。
大悟さんはテレビの中と印象そのままで、お会いした際「ごめんな、俺が夫で」と言われ、「えーそんな!」って。
とてもシャイな感じがしましたし、とても素敵な方だと思いました。
「少し先の未来」の物語ですが、夫婦の形や子供のこと、人と人の愛というのはずっと変わらない大事な部分だと感じながら演じています。きっと見終わった後に心が温かくなる作品になると思いますので、是非、楽しみにしていてください。
クランクインです。ビビってます。
大悟 クランクイン コメント全文
これだけの人と時間をかけて、今からすごいことが始まるんだなと楽しみは楽しみですが、大丈夫なんかな“ワシ”ってほうが大きいです。
奥さん役の綾瀬さんは本当にあのままというか、非常に明るい楽しい人でとても良かったと思っています。
一番最初にお会いしたときに「ごめんね、ワシがダンナ役で」と言ったら優しい顔で笑ってくださいました。
今日はまだ2人の芝居シーンをしていないので、今のところはただただかわいく、ただただ遠くから見ています。
是枝監督からは、あまり皆さんにしてるかはわかりませんが、
「大悟さん、そんなにきっちりセリフ覚えなくても、僕が現場で耳打ちする感じでそれをそのまま自分なりにやっちゃってください」と言って頂きました。それは監督がこれまで子役に使ってた手法らしくて…。
そう仰っていただいて自由にやっていいんだなって、非常に気持ちが楽になりました、今のところは。
日頃は笑ってもらうお仕事をしていますが、大悟が出た、大悟がしゃべった、大悟が現れたで笑われないように頑張りたいです。あとは、監督にお任せします。どういうのが出るかなって、自分でも楽しみです。
『箱の中の羊』
■原案・監督・脚本・編集:是枝裕和
■主演:綾瀬はるか、大悟(千鳥)
■製作:フジテレビジョン、ギャガ、東宝、AOI Pro.
■配給:ギャガ
■配給協力:東宝
©2026「箱の中の羊」製作委員会
■公式twitter&公式instagram:@Hakohitsujifilm
NiEW編集部からのひとこと
2025年5月に公開された全編iPhone撮影の是枝監督による短編映画『ラストシーン』は50年後から来た少女と現在を生きる脚本家が主人公、未来が作品の大きな要素として登場したが、今作の舞台も未来。監督はいま、未来を考えるムードなのかしら。言われてみれば夫婦役お二人の衣装もなんだか未来の香りがするような? と思いつつ、『星の王子さま』を読み返して公開を待ちたいと思います! お三方のコメントがとても素敵でしみじみ読みました。楽しみ!(柳瀬)