2026年2月14日(土)から3月1日(日)まで、神奈川・横浜のKAAT神奈川芸術劇場で上演される『未練の幽霊と怪物―「珊瑚」「円山町」―』の出演者が発表された。
同作はチェルフィッチュ主宰の岡田利規が作 / 演出を手掛ける新作で、2021年にKAATで上演され、多数の賞に輝いた『未練の幽霊と怪物—「挫波」「敦賀」—』の第2弾。「虹~RAINBOW~」をタイトルとするKAAT神奈川芸術劇場の2025年度メインシーズン最終作品として上演される。
作品は目に見えないもの、霊的な存在がその想いを語る「夢幻能」の構造を借り、現代社会の巨大な構造の中で犠牲となった膨大な未練の思いを残す存在を2本立てで表出させる内容となっている。音楽はギタリスト / コンポーザー / アレンジャーの内橋和久が前作から続投し、謡手に奄美を代表する唄者として国内外で活躍している里アンナが出演することが発表されていた。
主役である「シテ」は、『東京2020オリンピック』でソロパフォーマンスを披露し、気鋭の「表現者」として活動を展開するアオイヤマダと、ダンスパフォーマンスグループ・s**t kingzのメンバーとして活躍する一方、近年では舞台や映像などソロでの表現の幅を広げている小栗基裕が担う。相手役である「ワキ」は、舞台を中心にキャリアを重ね、今回が岡田作品4度目の参加となる石倉来輝(いしくらりき)、プロブレイキンチームに所属するダンサーでもある七瀬恋彩(ななせここあ)、CMや舞台など多方面で経験を重ね声優としても実績を残す清島千楓(きよしまちか)が担当する。進行役や助演役を務める「アイ」は、第1弾に続き俳優として40年超のキャリアを誇る片桐はいりが務める。情報公開に際し、岡田利規、内橋和久、アオイヤマダ、小栗基裕、片桐はいり、里アンナからのコメントも公開された。
岡田利規
『未練の幽霊と怪物―「挫波」「敦賀」―』は、能というフォーマットをわたしなりに活用してわたしなりの演劇をつくる試みでした。この社会・世界に無数に存在している、浮かばれない魂、成仏できないでいる存在者へのエンパシーを上演空間において共有する。その企みには意義があるはずだし、続けたい、とわたしは思っていましたから、今回それを実現するチャンスをKAATからいただけて、嬉しいです。クリエーションに関わる皆さんと楽しくつくり、観客の皆さんに濃密な体験となる上演を届けるつもりです。内橋和久
「未練の幽霊と怪物」第二弾。ミュンヘンでの初作『NÕ THEATER』を入れると三作目なのですが、同タイトルの前作(2020)から「謡手」を据える方式をスタートしました。能楽の持つ荘厳さと様式美に、現代の歌/唄のテイストを織り交ぜた作品に仕上げるというのが私の狙いです。今回は更にそこへ、奄美の伝統の節を織り込むことにチャレンジします。この挑戦を思い立って真っ先に頭に浮かんだのが、里アンナさん。個人的に何度か共演歴があり、大きな-歌の力-と呼ぶべきものを感じる方です。そんな歌・謡・唄が、岡田利規の世界とどう融合して昇華、結晶化をみせてくれるのか、今から楽しみでなりません。アオイヤマダ
私の脳裏にぺったりとくっついてしまった
2021年の岡田利規さんの作品『未練の幽霊と怪物―「挫波」「敦賀」―』。
題材となった千駄ヶ谷を通るたびに思い出し、
あらゆるものの点とこの作品とが繋がっていく。
敦賀に関しては「日本海の魚美味しいよね〜」という会話からも思い出すようになった。
作品を思い出すときには、それと繋がった多くの思い出が溢れ出てくる。
幽霊みたいな記憶が、私の思い出たちと手を繋いでいる。
きっと、この先も一緒に生きていくんだろうな。
そんな幽霊みたいな記憶を、私も作りたいです。
宜しくお願い致します。小栗基裕(s**t kingz)
武者震いが止まりません。踊る者として、俳優として、表現者として、このような素晴らしい機会を授かったことに心も身体も震えております。前作の「挫波/敦賀」を食い入るように見終わった後の凄まじい余韻。人間の想像力と創造力が一つの空間をこんなにも別世界へと変えてしまうのかと、全身に入っていた力が溜め息と共にすーっと抜けていきました。この衝撃を受け継ぎ、届けるという使命を背負い、自分にしか出来ない表現を見い出し、積み上げてきた全てを信じて、新たに岡田さんが創り出す未知の世界に飛び込ませて頂きます。観に来てくださる皆様の身体の芯まで響かせられますように。片桐はいり
前回は特別だった。2020年4月の緊急事態宣言で劇場公演が中止になり、誰とも一度も会うことなくリモートで稽古、その一部を配信で上演した。毎日ひとりで、慣れない機械操作と岡田さんの独特な台詞と動きに七転八倒した。そして翌年、同じく延期された東京五輪を前に、安全な距離を保った劇場で本番の時だけマスクをはずしてやった。特別な時間だった。けど今じゃ「そんなことあったねえ」みたいな空気。なんて忘れっぽいんだ。今度また、すでに記憶の彼方の幽霊や、なかったことにはできない怪物たちを呼び戻して新作をつくることになった。今いちど新しい人たちと、2026年のやり方でこの作品に挑めることはとてもありがたい。でも少しこわい。里アンナ
この度、「未練の幽霊と怪物」に謡手として参加できることを、大変光栄に思います。
声は目に見えないけれど、空間を満たし人の心に深く染み込んでいくものだと感じています。
幼い頃から祖父に島唄を教わってきた私にとって、唄は祖父との会話であり、先人たちの声を受け継ぐもの。
この作品に登場する“未練”を抱えた存在たちが、時を超えて語りかけてくるような感覚には、どこか通じるものがあると感じています。
今回、一音一言を大切に未練を抱えた存在たちの想いを謡にのせて届けたいと思います。
ぜひ、劇場へ足をお運び下さい。
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『未練の幽霊と怪物―「珊瑚」「円山町」―』
作・演出:岡田利規
音楽監督:内橋和久

出演:
アオイヤマダ 小栗基裕(s**t kingz)/
石倉来輝 七瀬恋彩 清島千楓 / 片桐はいり
謡手:里アンナ 演奏:内橋和久

会場:KAAT神奈川芸術劇場 <大スタジオ>
日程:2026年2月14日(土)〜3月1日(日) 予定
主催・企画制作:KAAT神奈川芸術劇場
<ツアー>
2026年3月
【兵庫公演】兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【新潟公演】りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
【京都公演】ロームシアター京都 サウスホール